Revival of Scale on FX
2025年のルール改訂における大きなトピックの一つとして、ゆかにおけるバランスの必須化が挙げられます。
片足平均立ち(A) Scale
脚を保持しない180°開脚片足平均立ち(B) No Hand Scale

バランスは、難度表のI-61「片足平均立ち」、I-62「脚を保持しない180°開脚片足平均立ち」のいずれかの技を指します。これらのバランス技はDスコアの算出に関与する8技に含まれる必要はないとされており、ルール全体を見渡してもかなり異彩を放つ構成要求となっています。なお、演技にバランスが含まれない場合は0.3のペナルティ(ND)が課せられます。
かつては必須の要素だったバランスが、必須でなくなったのは1997年のルール改訂の時です。1993年版採点規則では「片脚、あるいは片腕上の1つのバランス技(2秒静止)」が特別要求となっていましたが、これが1997年版採点規則では「B難度以上の片脚、あるいは片腕上の1つのバランス技(2秒静止)、あるいはB難度以上の1つの力静止技(2秒静止)」となりました(1)。B難度のバランス技は、現在と同じで脚を保持しない180°バランスという難しい技になること、そしてこれがB難度の力静止技で代用できることから、バランスの出現は一気に激減しました。
2025年のルール改訂で28年ぶりに必須化されるバランス技。以前にルール改訂の記事で書いたとおり、今さら何の意味があるのかはよく分かりませんが、風情は出るでしょう。というわけで、今回は往年のゆかの演技から、印象に残るバランス技を集めてみようと思います。
ユーリー・バラバノフ(旧ソビエト連邦) BALABANOV Yuri (URS)
バランスと言えば、何と言ってもバラバノフのこの素晴らしいI字バランスでしょう。演技の途中にもとんでもない柔軟の表現があります。
イオアニス・メリサニディス(ギリシャ) MELISSANIDIS Ioannis (GRE)
柔軟の表現に秀でた選手をもう一人。「生けるギリシャ彫刻」ことメリサニディス。1996年アトランタオリンピック、ゆかで金メダルを獲った演技です。
ウラジミール・アルチョーモフ(旧ソビエト連邦) ARTEMOV Vladimir (URS)
1988年ソウルオリンピック、個人総合の金メダリスト。アルチョーモフのこの両手と片足を同時に上げるムーブも個人的に好きな捌きです。
ドミトリー・ビロゼルチェフ(旧ソビエト連邦) BILOZERCHEV Dmitri (URS)
そのアルチョーモフとソウルの個人総合を競った選手の一人、ビロゼルチェフのバランスも評価する声が少なくありません。ゆかの外を向いて実施。上半身を傾け、両足を一直線に伸ばした姿勢を披露します。
アレクサンダー・コリバノフ(ロシア) KOLYVANOV Alexander (RUS)
B難度の「脚を保持しない180°開脚片足平均立ち」は、かなりレア技にはなりますが実施例はもちろんあります。ゆかとあん馬の技名にもなっているコリバノフ。動画は1992年モスクワワールドスターズのものです。
中野大輔 NAKANO Daisuke (JPN)
中野大輔は2004年アテネオリンピックの種目別で脚を保持しないバランスを見せました。グループIの要求はすでに取っており価値点には全く関与しない技ですが、わずかな実施の差で順位が決まる種目別決勝の場面でアピールしてみせたのです。結果は6位でしたが、中野らしい心意気が感じられる実施でした。
個人的に印象に残るバランスをいくつかあげましたが、かつては必須技でありその実施例はまさに無数です。もっとすごい実施がある、この選手のこのバランスが好き、などいろいろなご意見があることでしょう。忌憚のないコメントを頂けると幸いです。
参考文献
(1) 加納實、伊藤政男:採点規則の改訂に伴うゆか運動の演技構成に関する一考察, 順天堂スポーツ健康科学研究 (1993)
この記事へのコメント
あき
Ka.Ki.
コッコ
必須事項であった時代の片足平均立ちの実施を見ると脚を保持する120°から150°くらいの開脚をした実施が一番多いように思うので、今後そのような実施が試合で出た場合どのように認定するのか疑問なところです。
脚を保持しない180°開脚片足平均立ちはC難度に上げて、脚を保持する180°開脚をB難度、脚を保持しない90°以上150°未満の開脚と脚を保持する120°以上150°未満の開脚での実施を同一難度にするなどの工夫が必要ではないかなと思います。
Ka.Ki.
コフトゥン
もともと片足平均立ちを入れるというルールはバランスを重要視しているということなので、実質8技に入らないのが前提というのも変な話でしょう。また180°開脚がB難度だと小欠点でT字バランスと結果点は同じに、C難度にして原点なしを狙って上位8技に入れていく選択肢もあるというのが健全と考えてしまいます。
体操大好き人間
体操なのに無くすのを不思議と思っていた派なので、復活してもらえて今後の「ゆか」が面白くなりそうです。
8技に入れず減点だけを誘い込むバランスは、選手にとって一番緊張する場面の一つになるのではないでしょうか。
楽しみしかありません。
Ka.Ki.
なるほど、難度に幅が出ることによって、いろいろ戦略が出てきそうということですね。
Ka.Ki.
普通は終末技前に入れて、ちょっと落ち着かせるポイントなのかなと思っていましたが、「8技に入れず減点だけを誘い込むバランス」いい表現ですね。確かに気が抜けない場面になりそうです。