Disappearing Elements : Inlocate Giant on HB
2024年もいよいよ年の瀬、今サイクルの消えゆく技もこれで一区切りとします。最後は鉄棒の大順手車輪(A)を取り上げます。
大順手車輪(A) Inlocation Giant

大順手とは、ちょっと説明しにくいのですが、順手握り(普通の後方車輪の握り)から肩関節を後ろに転位した状態の握り。この握りで後方車輪を行うのが大順手車輪で、通常は順手の後方車輪から肩を転位させて大順手車輪に移ったり、逆に大順手車輪から順手の後方車輪に戻ったりします。A難度の技になり、D難度の順手背面車輪とは異なる技です。
1984年ロサンゼルスオリンピックでの森末慎二の実施映像を見ることができます。肩が固かったため、多くの選手が実施していた逆手背面車輪の代わりにこの技で背面系の要求を取っていた[1]そうです。
[1] 逆手背面車輪を実施している映像も残っています。また、1985年からは大順手車輪が背面系として認められなくなったため、ツォウ・リミンを使っていました。
近年は実施する選手はほとんどいませんが、2013年世界選手権・アントワープ大会ではイオン・グンナーソンというアイスランドの選手が使っています。トカチェフの後に実施。
かつてはスコーマルの名が付いていた技で、現在の難度表でもⓈのシンボルマークにその名残があります。旧チェコスロバキアのヴァーツラフ・スコーマルとヴァーツラフ・クビチカが1966年世界選手権・ドルトムント大会で発表した(1)とされており、1979年版採点規則には"Skoumal Giant Swing"として採点規則に記載されていました。スコーマルの名は2013年版採点規則まで載っていましたが、2017年版採点規則で名前が削除されています。最初はFIGお得意の記載漏れかと思いました[2]が、どうやら本当に名前だけを削除していたようです。
[2] 日本体操協会もそう思ったのか、2017年版の日本語版採点規則にはスコーマルの名前を乗せていました。
この技の削除について思うことは、2022年版採点速におけるあん馬の把手上上向きとび転向、下向きとび転向の削除のときと同じです。鉄棒の基本的な技術の一つであり、たとえ出現数が少なくても難度表に残しておくべき技ではないかと思います。FIGがこのような歴史ある技を次々と削除していくのはとても残念です。
参考文献
(1) 佐藤友久、森直幹:体操辞典, 道和書院 (1978)
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