FIG ニュースレター No.3

FIG Newsletter 15th Cycle No.3


FIGのNewsletter No.3が発行されましたので、ここで内容をまとめておきたいと思います。なお「⇒」以降は私のコメント(戯言)です。

解釈に間違いがあるかもしれません。競技関係者の方は原本を直接確認するか、日本体操協会の公式な情報をお待ちください。

ゆか FX

● 全ての旋回技は正面支持をもって開始・終了となる。1回ひねり(シュピンデル)は正面支持をもって開始・終了となり、6回の支持で実施さなければならない。1回ひねり直接倒立では5回目の支持(背面支持)で1回ひねりを完了させ、6回目の支持で倒立に持ち込まなければならない(採点規則の正確な図を参照すること)。
⇒これまでは「3回の正面支持」と通達されていましたが、シュピンデルでは正面支持が一瞬の局面になるためか、片手ずつ「6回の支持」と数えることにする、ということだと思われます。



● 完璧なマンナの実施は脚が水平となることである。マンナで、脚が水平から30°以内の場合は0.1の減点となる。30°を超えて垂直までは全て減点なしの脚上挙支持として判定される。脚上挙支持で、脚が垂直に達していない場合は、15°までは0.1、15°を超えて30°までは0.3の減点となり、30°を超えると不認定となる。
⇒これまでは9-2条9.に則って「15°まで:0.1、>15°~30°:0.3、>30°~45:0.5、45°を超える:0.5+不認定」とされていましたが、さすがにそれでは甘すぎるだろう、ということだと思われます。いまいち説明不足な図が付いています。
20230713_01.png


あん馬 PH

● ブスナリ系の技は360°以上のひねりで実施されても、採点規則に記載されている格上げルール適用される。
⇒特に明文はなかったかもしれませんが、これまでも同様の解釈で運用されていたと思います。



● 全ての縦向き移動技において、前進または後進の動作の最中である場合は、角度逸脱の減点はない。両手が馬体の同じ部分にある場合(1-1、3-3、5-5)には角度逸脱の減点がある。例えば、1/2後ろ移動で選手が33°の角度逸脱の正面支持で技を終えた場合は0.3の減点となる。この逸脱は次に実施される移動技の動作とはみなされない。
⇒動画を見るに、マジャール(D)の開始時点から1回旋回した正面支持は両手が同じ1-1でも角度減点はないようです。しかし、シバド(D)の終了時点の正面支持には角度減点があり、直ちにロス(D)などにつなげても「次に実施される移動技の動作とはみなされない」ということのようです。ちょっと分かりにくい感じがします。





● ミクラック系の技について、選手が技を完了する前に脚で身体を支えた場合は不認定となり、「落下を除く演技の中断」として0.5の減点となる。
⇒通達では「ミクラック系の技」とありますが、動画を見ても分かるようにダブルセア系の技への通達であることに留意する必要があります。ニュースレター #36でも同様の通達がありました。



つり輪 SR

● 振動からの力静止技を実施する際の極端な腕の曲がり(90°を超える場合)は0.5の減点となり、技が不認定となることもある。最終的な静止姿勢はその技術的な要件を満たしていれば認定される。例えば、極端に腕を曲げて実施された後ろ振り上がり開脚上水平支持は不認定となるが、最終的な開脚上水平支持はA難度で認定される。



平行棒 PB

● ディアミドフのように倒立で完了する技では、選手は懸垂や腕支持などの次の技に続ける前に、明確な倒立姿勢を示さなければならない。そうでない場合は、技が不認定となる可能性がある。
⇒近年、ディアミドフ(C)などの後に単純な前振り上がり(A)から後ろ振り倒立(A)をする動きがしばしば見られ、非常に気になっていました。この通達ではあまり改善されない気はしますが、個人的には厳しく適用してほしいと思います。



鉄棒 HB

● 演技開始時、選手が後ろ振り上がり支持の体勢から後方浮支持回転倒立(または他の動き)を実施した場合は、方向転換(採点規則15-2条-1 d))として0.3の減点となる。後方へのスイング中に支持の体勢が示されなかった場合は、減点はない。
⇒この動きが減点になるとは思ってもみませんでした。動画を見ると腕の角度が45°を超えるかどうかで判定されるようです。



● 順手背面車輪を終了する際、選手が後方閉脚浮腰回転支持から直ちにシュタルダーに続けた場合は、後方閉脚浮腰回転支持の肩角度や脚の入りに関係なく、常にシュタイネマン(B)およびシュタルダー(B)として判定される(倒立まで上げた場合も含まれる)。シュタルダーが実施されない場合は、角度減点や不認定の可能性を伴うケステ(C)として判定される。
⇒ケステを行って角度が足りなかった場合は、直ちにシュタルダーを入れた方が良さそうです。



「日本体操協会の公式な情報をお待ちください」とは書きましたが、協会は英語版ニュースレターのリンクを貼っただけでこの通達を8月から適用するとしています。全ての項目に動画の説明が付いており、以前よりかなり分かりやすくなっているとは思いますが、できるだけ早く『男子体操競技情報』などで日本語の情報を出してほしいものです。



新技が3技掲載されています。

ゆか FX

ミナミ 発表者:南一輝 MINAMI Kazuki (JPN)
・後方かかえ込み2回宙返り7/2ひねり
・H難度(III-66)
・2023年種目別ワールドカップ・ドーハ大会で発表

20230713_02.png



当ブログではこちらの記事で練習動画を、こちらの記事で演技を紹介しました。南の大技に晴れて名前が付きました。ニュースレターではなぜか「ミナミ2」となっています。


あん馬 PH

ドリゼ 発表者:DOLIDZE Dachi (GEO)
・両把手から1/4転向、ただちに一把手上ロシアン270°転向倒立下り
・D難度(グループIV)
・2023年世界ジュニア選手権・アンタルヤ大会で発表

20230713_03.png



世界ジュニア選手権でジョージアの選手が発表した技。これはロシアン450°転向倒立とは見ないのでしょうか。いずれにせよちょっと微妙な技ではあります。


リード 発表者:REID Michael james (JAM)
・縦向きとび後ろ移動(馬端~馬端)
・E難度(グループIII)
・2023年パンアメリカン選手権・メデジン大会で発表

20230713_04.png



当ブログではこちらの記事で演技を紹介しました。発表した大会ではF難度で判定されていましたが、今回の通達ではE難度の技として認定されたようです。


遡って名前が付けられた技が1技掲載されています。

平行棒 PB

マツナガ 発表者:松永政行 MATSUNAGA Masayuki (JPN)
・懸垂前振り後方かかえ込み宙返りひねり腕支持
・D難度(III-64)
・1992年バルセロナオリンピックで発表

20230713_05.png



いわゆる車輪ライヘルトにやっと名前が付きました。1992年バルセロナオリンピックで発表となっていますが、松永は遅くとも1990年にはこの技を実施しています。

この記事へのコメント