FIG Newsletter 15th Cycle No.2
FIGのNewsletter No.2が発行されましたので、ここで内容をまとめておきたいと思います。動画は埋め込みでは見られないようなので、YouTubeからご覧ください。なお「⇒」以降は私のコメント(戯言)です。
解釈に間違いがあるかもしれません。競技関係者の方は原本を直接確認するか、日本体操協会の公式な情報をお待ちください。
一般条項 General
● 採点規則9-2条17
・足をわずかに開いて着地し、つま先を浮かせず踵を揃える:減点なし
「わずかに」(slightly)について、足を腰幅に広げると安全な着地が可能になることから、10cmと定義する。着地をしてから踵を揃えても、両足が10cm以上開いている場合は、0.1または0.3の減点となる。
⇒実は日本語版採点規則では「わずかに」ではなく、既に「肩幅以内」と記載されています。腰幅と肩幅の違いはありますが、とにかくも明確な数値が決まったようです。腰幅と10cmのつながりはよく分かりませんが…。
● 低い着地は、腰が膝より下にある状態と定義され、技術的欠点として0.5の減点となる(第9-4条「その他の技術欠点」)。
ゆか FX
● エンドー(I-68)は、選手が手から着地し正面支持臥になるまでコントロールされた実施を見せなければならない。動画のエンドーはD審判によって不認定となり、E審判によって「不安定な着地姿勢」として減点される。
● 一つの独立した技として認定されるためには、シュピンデルは最大2回の旋回で実施されなければならない(技の開始から3回の正面支持)。旋回270°以上ひねり直接倒立(I-93,100)については、3回目の正面支持がすなわち倒立に上げる局面となる。
⇒特に新しい事項ではないと思います。
あん馬 PH
● 正交差倒立(I-4)は、まっすぐな姿勢と停滞のない上昇運動で実施されなければならない。選手が極端に腰を曲げた状態(90°を超える)で実施した場合は不認定となる。技の各段階において、片脚または両脚がポメル間で動いた場合も不認定につながる。
⇒「片脚または両脚がポメル間で動いた場合」の意味が分かりにくい気がします。また、動画は不認定の例ですが、具体的にどこが悪いのかや、認定される正しい実施例を示してほしいところです。
つり輪 SR
● 演技は腕を垂直かつまっすぐに伸ばした懸垂姿勢から開始されなければならない。また、静止した姿勢から技が開始されない場合、その後の力技に「力技において振動を使う」の減点が課される可能性がある。
● バランディンタイプの技において、肩は完全な静止位置より上に上がってはならない。脚が垂直線を通過する時点で肩が45°を超えて上に上がっている場合は不認定となる。プレス局面においては体はまっすぐでなければならない。採点規則9-2条8は、体がどの時点でも45°を超えて曲がった場合は技は認定されず、大欠点を受けるとしている。
⇒動画はFB Curvesを使用しているため分かりやすいと思います。
鉄棒 HB
● 減点なく演技を開始するために、最大3回のスイングによる振り出しが認められる。前方及び後方へのあらゆる動きはスイングとしてカウントされる。なお、ジャンプした際のスイングや、コーチが選手を押してスイングさせる動きもスイングとしてカウントされる。
⇒3回のスイングは振り上がりまでのほぼ最小回数になると思われます。3回を超えると0.3の減点となるため、細かい動きにも気を付けたいところです。
● 伸身トカチェフはバーを再び握るまで、技全体を通して伸身姿勢で実施されなければならない。選手がバー上を通過する前に体を45°を超えて曲げると、屈身トカチェフ(C)として認定される。これは足先がバー上を通過するまで伸身姿勢でなければならないことを意味する。
● 付加的な握りの変更は「付加的または中間的な支持」(日本語版採点規則では「余分な手をつく」)として0.1の減点となる。
例:
・ツォウ・リミンやアドラー1回ひねり片逆手の直後に握りを逆手に変更した場合0.1の減点
・順手のエンドー、け上がり、後ろ振り上がりから2回連続で握りを変え逆手になった場合は、2回目の握りの変更の時点で0.1の減点
片逆手の前方車輪、エンドー、後ろ振り上がり、け上がりなどに続いて逆手になる場合は減点はない。
⇒動画の例が豊富なので比較的分かりやすいと思います。アドラー1回ひねり片逆手から直ちに逆手に持ち換える動きが以前から気になっていましたが、減点対象となります。国内でもよく見られる手放し技(ヤマワキなど)から順手キャッチ直ちに片逆手に持ち換えエンドー、倒立で逆手持ち換えの動きは減点ではないようです。
認定、不認定という話が多いですが、実際の採点の場面において不認定になる例が非常に少ない気がします。ルールや基準を決めたのであれば、厳格に適用して不適切な実施は躊躇なく不認定にするべきだと思います(その点、女子はジャンプ系やターン系の技があるという事情もありますが、かなりシビアだと思います)。
新技が4技掲載されています。つり輪が3技、鉄棒が1技です。こちらの動画は埋め込みで見られるようです。
つり輪 SR
ツォウ 発表者:鄒敬園 ZOU Jingyuan (CHN)
・十字倒立からゆっくり下ろして逆懸垂経過伸腕伸身逆上がり脚上挙十字懸垂(2秒)
・E難度(グループII)
・2022年世界選手権・リバプール大会で発表

当ブログではこちらの記事で演技を紹介しました。技名はフルネームではなくツォウになっています。FIGのやることなので、次に見るときはフルネームに変わっている可能性もありますが。
シモノフ 発表者:SIMONOV Nikita (AZE)
・ゆっくりと後方伸腕伸身逆上がり中水平支持経過十字倒立(2秒)
・F難度(グループII)
・2022年世界選手権・リバプール大会で発表

当ブログではこちらの記事で演技を紹介しました。ツォウとともに微妙な技ですが、どちらも名前が付きました。
グラシア 発表者:GRACIA Cesar (MEX)
・ホンマ脚上挙支持(2秒)
・C難度(グループIII)
・2022年パンアメリカン選手権・リオデジャネイロ大会で発表

脚上挙支持になる技のパターンがまだ残っていました。レア技です。
鉄棒 HB
フォーク 発表者:FAULK Caleb (JAM)
・バーを越えながら後方伸身2回宙返り3/2ひねり下り
・E難度(グループIV)
・2022年パンアメリカン選手権・リオデジャネイロ大会で発表

ヘイデン(D)にひねりを加えた技になります。鉄棒の終末技は後方伸身の月面ひねりや新月面ひねりも難度表にないため、今後雨後の筍のように出現するかもしれません。
この記事へのコメント
エレナ・シュトロワ
Ka.Ki.