2022 Worlds TF Review
2022年世界選手権・リバプール大会の団体決勝は中国が優勝、日本は2位、イギリスが3位という結果でした。日本は予選で実力を如何なく発揮し、予選2位のイギリスに7点以上の差を付けて1位通過。一方、中国は予選でミスが相次ぎ日本と10点以上の大差が付いた4位通過でしたが、決勝では日本にミスが相次いでしまいました。団体決勝の得点について振り返っていきたいと思います。
あらためて3チームの結果を確認しておきましょう。中国、日本、イギリスの決定点とDスコアは以下のとおりです。
中国 CHN | |||||||
FX | PH | SR | VT | PB | HB | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
孫煒 | 13.866 | 13.633 | 13.833 | 14.666 | |||
5.3 | 6.1 | 5.6 | 6.3 | ||||
楊家興 | 14.200 | 13.433 | 14.533 | 13.433 | |||
5.7 | 5.7 | 5.6 | 5.6 | ||||
尤浩 | 14.633 | 14.866 | |||||
6.5 | 6.5 | ||||||
張博恒 | 14.266 | 13.966 | 14.133 | 14.966 | 14.366 | 14.433 | |
5.8 | 5.7 | 6.2 | 5.6 | 6.4 | 6.2 | ||
鄒敬園 | 14.866 | 15.766 | |||||
6.3 | 6.5 | ||||||
Total | 42.332 | 41.032 | 43.632 | 43.332 | 44.998 | 42.532 | 257.858 |
16.8 | 17.5 | 19.0 | 16.8 | 19.4 | 18.1 | 107.6 | |
日本 JPN | |||||||
FX | PH | SR | VT | PB | HB | ||
橋本大輝 | 14.500 | 14.433 | 13.866 | 13.866 | 13.133 | ||
6.0 | 6.0 | 5.9 | 5.6 | 5.7 | |||
神本雄也 | 14.233 | 14.766 | 14.200 | ||||
6.4 | 6.5 | 6.0 | |||||
土井陵輔 | 14.366 | 13.033 | 14.700 | 14.700 | |||
6.2 | 5.6 | 5.2 | 6.4 | ||||
谷川航 | 14.100 | 14.766 | 14.933 | ||||
6.0 | 5.6 | 6.3 | |||||
谷川翔 | 14.500 | 11.000 | 14.300 | ||||
6.0 | 5.9 | 6.3 | |||||
Total | 43.366 | 38.466 | 42.199 | 43.332 | 43.999 | 42.033 | 253.395 |
18.2 | 17.5 | 18.3 | 16.4 | 19.1 | 18.1 | 107.6 | |
イギリス GBR | |||||||
FX | PH | SR | VT | PB | HB | ||
FRASER | 10.466 | 14.033 | 15.000 | 14.000 | |||
5.6 | 5.6 | 6.5 | 5.8 | ||||
HALL | 14.200 | 12.200 | 13.600 | 14.033 | 13.700 | ||
5.8 | 5.6 | 5.2 | 5.9 | 5.5 | |||
JARMAN | 14.433 | 12.566 | 13.733 | 13.100 | |||
6.3 | 5.1 | 6.0 | 4.8 | ||||
REGINI-MORAN | 14.166 | 14.600 | 14.233 | ||||
6.2 | 5.6 | 6.4 | |||||
TULLOCH | 14.666 | 14.500 | |||||
6.1 | 5.6 | ||||||
Total | 42.799 | 35.232 | 42.299 | 42.833 | 43.266 | 40.800 | 247.229 |
18.3 | 16.3 | 16.9 | 17.2 | 18.8 | 16.1 | 103.6 |
第1ローテーション。日本、イギリスはゆかから。日本は谷川翔の素晴らしい演技から始まりました。橋本も続き、土井が予選より少し点数を落としますが、43.366と好スタートを切ります。中国はあん馬。孫煒が落下、楊家興の旋回にも乱れが出て41.032。5位スタートとなります。
第2ローテーション。日本、イギリスはあん馬。ここで日本が大きくつまづきます。土井が落下。そして、谷川翔はセア倒立でポメルから手が外れ、旋回が再三乱れた後に落下。終末技も乱れてしまいEスコア5.100、決定点11.000という散々な演技になってしまいました。日本は6位にまで順位を落としてしまいます。イギリスもボロボロで得点は35.232、この時点で最下位。中国はつり輪で立て直し、43.632と予選より2.300も高いスコアをマーク、2位に上がります。ここで首位に立ったのは何とブラジルでした。
第3ローテーション。中国は跳馬。孫煒のラインオーバーがありましたが、それ以外は好調を維持。ここで首位に立ちます。日本、イギリスはつり輪。谷川航が素晴らしい演技を見せ、着地もピタリと止めます。Dスコア5.8が表示されますが、問合せ(inquiry)を経て6.0に改められました。日本は5位に浮上。
第4ローテーション。中国は得意の平行棒。尤浩と鄒敬園が素晴らしい演技を見せ、44.998という高得点で2位以下を一気に突き放しにかかります。日本、イギリスは跳馬。土井がシューフェルト(D:5.2)でEスコア9.500という素晴らしい跳越を決めます。谷川航は予選ではリ・セグァン2(D:6.0)を狙ってのブラニク(D:5.6)でしたが、ここでは最初からブラニクのつもりだったでしょうか。着地を軽く跳ねる程度に収めます。しかし、橋本のロペス(D:5.6)の着地が低くなり、両足ラインオーバー。今一つ波に乗り切ることができません。日本は3位。
第5ローテーション。中国は鉄棒。予選の出来が良かったため、この種目が唯一予選より低い得点となりましたが、良好な演技を揃えます。日本、イギリスは平行棒。谷川航はここでも落ち着いた演技を見せ、着地もピタリと止めますが、谷川翔、神本が予選より点を下げてしまいます。日本は2位、イギリスも4位にまで順位を上げてきました。
最終ローテーション。日本、イギリスは鉄棒。エース橋本がアドラーひねり(D)からのリューキン(F)で落下。伸身トカチェフ(D)からトカチェフ(C)への連続もできませんでした。中国はゆか。すでに2位日本に4点以上の差が付いており、逃げ切り態勢で3選手とも予選よりDスコアを抑え確実な実施となりましたが、それでも予選より高い得点を出しました。イギリスは得点を伸ばし3位に入りました。
日本は圧倒的な得点差で予選1位通過しましたが、決勝では大きな陥穽が待っていました。谷川翔のあん馬の失敗がどうしても目立ってしまいますが、日本のミスは6種目全てに及んでおり、大小様々なミスの積み重ねがこの結果になっています。日本は予選より高い得点を出した種目は1つもなく、予選から7.300も得点を落としました。一方、中国は予選より低い得点だった種目は鉄棒のみで、7.929も得点を伸ばしています(予選が悪すぎたこともありますが)。両者の合計Dスコアは107.6と奇しくも同じで、実施で4.463もの差を付けられたことになります。予選で取れていた得点が決勝で取れないわけがありません。日本はとにかく実施の安定度を増すことが課題になってくると思います。
この記事へのコメント
コッコ
開脚旋回やシュピンデル系の技は一度乱れると簡単には修正できない事から技の選択肢としては外す勇気も必要なのかなと思います。
今回最も採点傾向が変わったと感じたのは平行棒です。ちょっとしたミスの積み重ねでかなりの差になる事を痛感しました。前振り上がりに対する減点の整理が明文化されたことで、尤浩のようなダイナミックな演技で勝負することがますます難しくなったように感じます。
Ka.Ki.
前振り上がりの減点については、いわゆる爆弾カットの実施が減るのかなと思っていましたが、今のところそんな感じはないですね。