KOHEI UCHIMURA THE FINAL Report
3月12日、内村航平の引退試合、KOHEI UCHIMURA THE FINALが東京体育館で開催されました。すでに多くの報道がなされていますが、当ブログもレポートを残しておこうと思います。

今大会は試合ではなく、採点を行わない演技会形式。各種目3人の選手が演技をし、内村は公約どおり6種目全て演技をしました。各種目では演技前に内村のコメントVTRが流されたり、演技後にその演技で撮られた1枚の写真について内村がコメントするといった演出がありました。
#1 ゆか FX
内村の他、加藤凌平、白井健三が演技。白井は自身の名が付くシライ3(H)、シライ2(F)、シライ/グエン(F)を披露。これは内村のリクエストによるものだったという。引退した選手とは思えない演技を見せた。
内村は2020年の友情と絆の大会のときと似た構成。後方3/2(C)~前方1回(C)~前方3/2(C)の着地を止め、終末技の後方3回(D)もほぼ止める。素晴らしい演技を見せた。
#2 あん馬 PH
萱和磨、亀山耕平が演技。萱はブスナリ(F)を入れ、正交差倒立(D)や2つのロシアン転向移動技など2022年の新構成とも言える演技を披露。亀山も持ち味の大きなセアを見せた。
内村は友情と絆の大会と同じ構成。シバド(D)で少し馬体に触れる場面もあったが、全体としては素晴らしい実施で演技を通した。
#3 つり輪 SR
谷川航、山室光史が演技。谷川航はフル構成。山室は全盛期からはほど遠い演技となったが、内村の体操を語る上で欠かせない盟友であり、門出を飾る演技を見せてくれた。
内村もつり輪は2019年以来となる。唯一「仲良くなれなかった」器械ということで、ほとんど触りだけの演技だったが、それでも中水平(D)を実施するのはさすが。そして終末技は2008年以来となる伸身月面(D)。着地は止まらなかったが、きれいな伸身姿勢で下り立った。
#4 跳馬 VT
谷川航、白井が演技。内村が最初に演技し、ロンダートひねり前転とび前方伸身宙返り2回ひねり(D:5.4)を見せる。これは「リ・シャオペンよりひねりが半分少ない技」で2019年に取り組むと報じられていた跳越。最後に見ることができた。
谷川はブラニク(D:5.6)、白井はシライ/キム・ヒフン(D:5.6)を見せるが、さらに白井は2本目の試技を要求。アカピアン(D:4.8)を跳ぶ。前転とび、側転とび、ロンダート後転とび、ロンダートひねり前転とびと、跳馬の様々な跳び方を揃えたいという内村の意向があったようだ。
#5 平行棒 PB
田中佑典、北園丈琉が演技。田中は横向き上がりから開脚前挙で1/4ひねって単棒縦向き倒立という古典的な技を披露。着地は止まらなかったが、そのまま片膝立ちでのポーズを決めてみせた。北園はフル構成。ササキ(E)でバータッチがあったが、それ以外は見事な実施で着地も止める。
内村はこちらも2019年以来で短い演技となったが、棒下ひねり倒立(E)、棒下倒立(D)は素晴らしい精度で決める。着地は1歩後ろに動いてしまった。
#6 鉄棒 HB
北園、橋本大輝が演技。特に橋本のカッシーナ(G)、コールマン(E)は雄大で素晴らしい。若手2人が素晴らしい演技で内村につなぐ。
内村は公約どおりブレットシュナイダー(H)を実施。さらには世界一美しいとうたわれたコバチ(D)も見せる。ともにバーに近くなりブレットシュナイダーでは振り戻ってしまうが、絶対に落下できないという思いゆえだろう。伸身新月面(E)の着地も止まらず内心は不本意だったと思われるが、内村は「だからTHE FINALなんです」と笑ってみせた。
最後は出場選手たちによる内村への胴上げ、そして内村らが会場内を練り歩き客席にTシャツを投げ入れるという演出がありました。

今大会、多くの選手が内村を囲み、そして多くのファンが東京体育館に集まりました。内村の人望、人徳がよく表れた引退試合だったと思います。内村自身はこれからも体操競技に関わっていくと発言しています。現役時代に築いた前人未踏の実績を基に、これからもファンをあっと言わせる活動をしてくれるものと期待します。
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