新ルールの橋本大輝の演技構成への影響

Influence of New Rule on Hashimoto's Routines


あけましておめでとうございます。2022年はパリオリンピックに向かう新たなサイクルの始まりであり、新たなルールが適用される年でもあります。当ブログは、前回のルール改訂時にはサイトの変更を行いましたが、今回は(少し色合いは変えましたが)同じサイトで続けていきたいと思います。まずは5年前にもやったこの企画でいきます。今年もどうぞよろしくお願いします。



2022年から適用される新ルールについて、橋本大輝の演技構成を例に、どのような影響が出るかを確認していきます。演技構成は2021年東京オリンピック:個人総合のものを用います。動画はまだNHKのサイトで見ることができます。埋め込みができないので画像をクリックしてください。

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#1 ゆか FX

1.リ・ジョンソンDouble Back 3/1GIII
2.前方伸身宙返り1回ひねりFront Lay 1/1CII
3.~前方伸身宙返り5/2ひねり+ Front Lay 5/2EII(CV:0.0)…①
4.後方伸身宙返り5/2ひねりBack Lay 5/2DIII
5.~前方伸身宙返り2回ひねり+ Front Lay 2/1DII(CV:0.0)…①
6.後方伸身宙返り3/2ひねりBack Lay 3/2CIII
7.~前方伸身宙返り3/2ひねり+ Front Lay 3/2繰り返し…②
8.後方伸身宙返り2回ひねりBack Lay 2/1繰り返し…③
9.開脚座から力十字倒立Split Press to Japanese HdstCI
10.後方伸身宙返り3回ひねりBack Lay 3/1DIII

① ひねり系同士の連続には組合せ加点が付かなくなります。
② 前方伸身宙返り3/2ひねりは前方伸身宙返り1回ひねりと同一枠になるので、繰り返し判定となります。
③ 後方伸身宙返り2回ひねりは後方伸身宙返り3/2ひねりと同一枠になるので、繰り返し判定となります。

別枠だった技が同一枠になったり、組合せ加点の規定の変更があったりして、かなり構成の変更を迫られることになります。ただ、これは多くの選手が同じ状況だと思います。


#2 あん馬 PH

1.アイヒホルンFlair 1/1 Spindle Travel and ReturnEII
2.横向き旋回1回ひねりFlair 1/1 SpindleDII
3.逆交差倒立Back Scissor to HdstCI…①
4.Eフロップ4 FlopsEII
5.Dコンバイン2 Flops + R180DII
6.トン・フェイTong FeiDIII
7.ロスRussian Travel 3/3 360DIII
8.開脚マジャールFlair MagyarDIII…②
9.開脚シバドFlair SivadoDIII…②
10.一把手上縦向き旋回倒立450°ひねり3/3移動下りP Loop to Hdst Travel 3/3 450EIV

① 逆交差倒立がD難度からC難度に格下げになります。
② 開脚マジャール、シバドの格上げはなくなり、単なるマジャール、シバドと同じ扱いとなります。

使っていた技のうち3つが格下げになるため、対応が必要になると思います。


#3 つり輪 SR

1.後ろ振り上がり中水平支持Back Uprise to MalteseEIII
2.アザリアンBack Roll to CrossDII
3.ヤマワキYamawakiCI
4.屈身ヤマワキYamawaki PkDI
5.ホンマ十字懸垂Whippet to CrossDIII
6.後ろ振り上がり開脚上水平支持Back Uprise to Strd PlancheBIII…①
7.ほん転逆上がり倒立Felge to HdstCI
8.後ろ振り上がり倒立Back Uprise to HdstCI
9.後方車輪倒立経過Back Giant thru HdstBI
10.後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり下りDouble Back 2/1EIV

① 後ろ振り上がり開脚上水平支持がC難度からB難度に格下げになります。

東京オリンピックでは後ろ振り上がり開脚上水平が不認定になりましたが、ここでは認定されたものとしました。ただ、その開脚上水平が格下げとなっています。種目別クラス未満の多くの選手が使っている技であり、世界的に影響が出るものと思われます。


#4 跳馬 VT

ロペスKasamatsu Lay 2/1

跳馬のDスコアの変更はありません。ロペスならD:5.6、ヨネクラならD:6.0のままです。ただ、2本跳んで種目別を狙う選手は、グループ分けが大幅に変わるため、少なからず影響があると思われます。


#5 平行棒 PB

1.後ろ振り上がり前方屈身宙返り支持Back Uprise Front Pk to SupDII
2.ヒーリーHealyDI
3.棒下宙返りひねり倒立Basket 1/2 to HdstDIII…①
4.棒下宙返り倒立Basket to Hdst繰り返し…①
5.後方車輪倒立Back Giant to HdstCIII
6.前方開脚5/4宙返り腕支持5/4 Front StrdDI
7.バブサーBhavsarEIII
8.チッペルトTippeltDIII
9.前振りひねり倒立Stützkehr to HdstCI
10.前方かかえ込み2回宙返りひねり下りDouble Front 1/2EIV…②

① 棒下宙返りひねり倒立は橋本の捌きではE難度で認められなくなると思われます。その場合、棒下宙返り倒立と同一枠となるため、その後の棒下宙返り倒立が繰り返し判定となります。
② 前方かかえ込み2回宙返りひねり下りがF難度からE難度に格下げになります。

棒下ひねり倒立は捌き方の変更が求められることになります。この棒下ひねり倒立の捌き方についてはいずれ記事にできればと思っています。終末技も世界的に多くの選手が使っている技であり、どのような影響が出るか興味深いものがあります。


#6 鉄棒 HB

1.アドラーひねりJam 1/2DIII
2.カッシーナCassinaGII
3.コールマンKolmanEII
4.伸身トカチェフTkatchev LayDII
5.~リンチ+ LynchCII(CV:0.1)…①
6.アドラー1回ひねり逆手Jam 1/1 to UGEIII
7.ヤマワキYamawakiCII…②
8.シュタルダーStalderBIII
9.後方とび車輪1回ひねりHop 1/1CI
10.後方伸身2回宙返り2回ひねり下りDouble Back Lay 2/1EIV

① リンチはトカチェフと同一枠になり、C難度に格下げとなります。組合せがD+Cになるため、加点も0.2から0.1になります。
② ヤマワキがD難度からC難度に格下げになります。

トカチェフと同一枠同難度となるため、リンチが見られることはほとんどなくなるのではないかと思われます。ヤマワキも世界的にとても普及している技ですが、影響はあるでしょうか。



今回もDスコアの算出はしていません。選手はルールに則り演技を構成するものであり、技の繰り返しなどの各種制限に触れる構成を組むことはありえません。旧ルールにおける演技を新ルールで採点することは意味がないため、今回もルール改訂に関する箇所のみを示しています。

今回のルール改訂は、2017年のときのようなグループの統合や跳馬のDスコアの変更がないため、全体的な得点の下落はありませんが、よく使われる技の難度格下げや枠の統合、組合せ加点の規定の変更があり、選手たちはかなり構成の変更を迫られると予想されます。

橋本の演技構成は、ルール改訂の影響が少ない比較的バランスの良い構成だと思いますが、それでもこれだけの影響が出ます。今サイクルはオリンピックまで3年と通常より短く、今年の世界選手権では早くも団体の出場資格が懸かってきます。早急な対応が必要になってくるでしょう。

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