Disappearing Elements : Li Ning Type Elements on SR
2022年版採点規則、つり輪ではリ・ニン系の技もごっそり削除されます。
背面懸垂前振り上がりからの支持技あるいは振動力技であり、削除されるのは以下の7技になります。
・リ・ニン(懸垂後ろ振り出し、背面懸垂前振り上がり)
・リ・ニン2(支持後ろ振り出し、背面懸垂前振り上がり)
・ショラニー(背面懸垂前振り上がり支持前方回転振り出し懸垂後ろ振り)
・リ・ニン十字懸垂
・リ・ニン2十字懸垂
・リ・ニン脚上挙十字懸垂
・リ・ニン2脚上挙十字懸垂
7技と書きましたが、今日ではリ・ニンが付く技とリ・ニン2が付く技はそれぞれ同一枠となっているため、難度表の上では4技ということになります。順番に見ていきましょう。
リ・ニン(リ・ニン2) Rear Hang to Front Uprise

発表者は李寧(中国)。懸垂からの実施がリ・ニン、支持からの実施がリ・ニン2で、リ・ニンは1983年(1)に発表されたようです。2013-2016年ルールまではリ・ニンがB難度、リ・ニン2がC難度でしたが、2017年のルール改訂で同一枠のB難度技となっています。
ショラニー Csollany

発表者は2000年シドニーオリンピックの金メダリスト、ショラニー・シルヴェステル(ハンガリー)。背面懸垂前振り上がりからケキ(B)の動きをする技です。現在は上の図のとおりケキと同一枠になっていますが、こちらも2013-2016年ルールまでは別枠でした。発表年は不明ですが、動画は1991年世界選手権・インディアナポリス大会から。
リ・ニン(リ・ニン2)十字懸垂 Li Ning (Li Ning2) to Cross

リ・ニン(リ・ニン2)から直接十字懸垂に持ち込む技でグループIIIの振動力技になります。ともに最初の実施者は不明ですが、今日でも中国勢がしばしば実施する技です。2013-2016年ルールまではリ・ニン十字懸垂がC難度、リ・ニン2十字懸垂がD難度。2017年のルール改訂で同一枠のC難度技となっています。動画はリ・ニン十字懸垂が鄧書弟、リ・ニン2十字懸垂が尤浩の実施。尤浩は脚前挙十字懸垂に持ち込んでいます。
ツカハラ Li Ning (Li Ning2) to V-Cross

リ・ニン(リ・ニン2)から直接脚上挙十字懸垂に持ち込む振動力技。発表者はツカハラ・ナオヤ(オーストラリア)。まずリ・ニン2脚上挙十字懸垂が2013年世界選手権・アントワープ大会(2)で発表され、E難度で認定されてツカハラの名が付きました。当時は様々な体勢から脚上挙十字懸垂になる技が次々と発表され、名前が付いていた時代でもありました。
調子に乗って(?)2015年世界選手権・グラスゴー大会(3)でリ・ニン脚上挙十字懸垂を発表しましたが、こちらはD難度で認定されるも類似する技として名前は付きませんでした。リ・ニン脚上挙十字懸垂の方を先に発表していればどうかという感はありましたが、いずれにせよ2017年のルール改訂で同一枠のD難度技として統合されています。
かつてはリ・ニン、リ・ニン2から十字倒立や中水平にいく技もありましたが、2009年に削除されたことは旧サイトで記事にしたとおりです。リ・ニン十字倒立となるショラニー2もすでに削除されており、今回のルール改訂で難度表からショラニーの名前は消えてしまうことになります。
かつては単なる前振り上がりより高い難度が設定されていたリ・ニン系の技ですが、背面懸垂から前に振り上がるという課題性や必要性に徐々に疑問が生じてきたのではないかと思われます。その意味では削除というよりも、前振り上がりと統合あるいは区別がなくなったと言えるかもしれません。
参考文献
(1) 遠藤幸雄、山田真市:スポーツのみかた体操競技, 保育社 (1985)
(2) FIG MTC:Newsletter #27 (2014)
(3) FIG MTC:Newsletter #30 (2016)
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