2021 Olympics TF Review
2021年東京オリンピックの団体決勝は予選3位のロシアが金メダル、予選1位の日本が銀メダル、予選2位の中国が銅メダルという結果でした。日本は団体代表の4人全員がオリンピック初出場、平均年齢21.5歳という若いメンバーでしたが予選を1位で通過し、連覇に期待がかかっていました。団体決勝の得点について振り返っていきたいと思います。
あらためて3チームの結果を確認しておきましょう。ロシア、日本、中国の決定点とDスコアは以下のとおりです。
ロシア (RUS) | |||||||
FX | PH | SR | VT | PB | HB | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
ABLYAZIN | 13.900 | 15.033 | 14.866 | ||||
6.0 | 6.3 | 5.6 | |||||
BELYAVSKIY | 14.841 | 15.333 | 14.166 | ||||
6.4 | 6.5 | 5.7 | |||||
DALALOYAN | 14.066 | 13.833 | 14.666 | 14.933 | 14.600 | 13.933 | |
6.0 | 5.8 | 6.0 | 5.6 | 6.1 | 5.7 | ||
NAGORNYY | 14.666 | 14.466 | 14.700 | 14.966 | 15.166 | 14.366 | |
6.2 | 6.2 | 6.0 | 5.6 | 6.4 | 6.0 | ||
Total | 42.632 | 43.140 | 44.399 | 44.765 | 45.099 | 42.465 | 262.500 |
18.2 | 18.4 | 18.3 | 16.8 | 19.0 | 17.4 | 108.1 | |
日本 (JPN) | |||||||
FX | PH | SR | VT | PB | HB | ||
橋本大輝 | 14.600 | 14.800 | 13.833 | 14.833 | 15.100 | ||
6.2 | 6.5 | 5.6 | 5.6 | 6.5 | |||
萱和磨 | 14.566 | 14.100 | 15.000 | 14.200 | |||
6.4 | 6.1 | 6.3 | 6.1 | ||||
谷川航 | 14.500 | 14.500 | 15.233 | 14.666 | |||
6.0 | 6.0 | 6.0 | 6.3 | ||||
北園丈琉 | 14.600 | 14.200 | 14.166 | 15.000 | 14.500 | ||
6.2 | 5.7 | 5.6 | 6.3 | 5.9 | |||
Total | 43.700 | 43.566 | 42.433 | 44.232 | 44.666 | 43.800 | 262.397 |
18.4 | 18.6 | 17.7 | 17.2 | 18.9 | 18.5 | 109.3 | |
中国 (CHN) | |||||||
FX | PH | SR | VT | PB | HB | ||
林超攀 | 13.166 | 14.733 | 14.133 | ||||
6.2 | 5.6 | 6.4 | |||||
孫煒 | 14.366 | 15.000 | 14.233 | 14.866 | 14.800 | 14.200 | |
6.0 | 6.3 | 5.9 | 5.6 | 6.5 | 6.0 | ||
肖若騰 | 14.600 | 14.166 | 14.366 | 14.733 | 14.933 | 14.233 | |
6.2 | 5.9 | 6.0 | 5.6 | 6.1 | 6.0 | ||
鄒敬園 | 14.800 | 15.000 | 15.466 | ||||
5.9 | 6.0 | 6.9 | |||||
Total | 42.132 | 43.966 | 43.599 | 44.332 | 45.199 | 42.666 | 261.894 |
18.4 | 18.1 | 17.9 | 16.8 | 19.5 | 18.4 | 109.1 |
第1ローテーション。日本、中国はゆか。ロシアはあん馬からのスタートです。日本は北園、橋本、谷川の3人が見事な演技を揃えて43.700の好発進。一方、中国は林超攀に転倒があり42.132と出遅れます。ロシアは得意とは言えないあん馬ですが、我慢の演技で43.140とまずまずのスタート。日本がトップで幸先の良いスタートを切ります。
第2ローテーション。日本、中国はあん馬。日本は北園が終末技でひねることができずC難度の倒立下りになってしまいます。Dスコアは0.3低い5.7に。予選でも同じミスが出ていましたが、修正までには至りませんでした。中国は鄒敬園が登場。14.800という高得点を出します。一方、肖若騰は旋回が乱れるなどして本来の得点が出ません。そしてロシア。つり輪で3人が高得点を揃え44.399。ここでロシアがトップに立ちます。終わってみれば、ロシアはここから1位をキープし続けたことになります。
第3ローテーション。ロシアは跳馬も好調。ここでも3人が高得点を揃え44.765。日本を引き離します。日本、中国はつり輪。谷川航が着地をピタリと止める見事な演技を見せ14.500を出しますが、チーム合計は42.433とまさに我慢のつり輪です。中国は予選でつり輪を演技しなかった鄒敬園が15.000をマーク。予選の41.866から大きく得点を伸ばす43.599とし、日本に0.002差に迫ります。
第4ローテーション。ロシアは平行棒も得意ですが、ダラロヤンが本来のDスコアではなく、実施でもバータッチがあるなど小さなミスが出ます。しかし、ベルヤフスキー、ナゴルニーは本来どおりの得点。45.099を出します。日本、中国は跳馬。日本は北園の着地が乱れ得点が伸びませんが、谷川航がリ・セグァン2を見事に止めて15.233という高得点で帳消しに。中国は3人がロペスを素晴らしい精度で跳び、ここで日本を抜いて2位に浮上。ロシアと2位中国との差は3.374と最も開きます。
第5ローテーション。ロシアは鉄棒。ダラロヤンは予選Dスコア6.0でしたが、ここは5.7と少し抑えてきます。日本、中国はともに得意の平行棒。日本は予選で15.300を出した橋本を温存し萱、北園、谷川航の布陣で演技に臨みます。しかし、谷川航の終末技がE難度になり着地も大きく1歩動いてしまいます。中国もまた本来どおりの実施ができません。何と言っても16点台を出せる鄒敬園が実施でらしからぬミスを出し、なんとペナルティ0.3も付いて15.466という得点になってしまいます。ロシアとの差は2位中国が0.640、3位日本が1.271と縮まります。
最終ローテーション。日本、中国は鉄棒。ともに3人が演技をまとめますが、ここで優位に立てるのは日本です。日本43.800、中国42.666で日本が逆転。橋本が素晴らしい演技で15.100を出しました。ロシアはゆか。ラインオーバーなどミスも出ますが、最終演技者のナゴルニーに求められた得点は14.563。予選で15点台を出したナゴルニーにとっては十分可能な点数です。途中の3連続技が予定と違う構成となり本来の演技ではありませんでしたが、急遽その後の後方2回を後方3回に替えるという離れ業も見せて14.666を出し、見事に金メダルを掴み取りました。
ロシアと日本の最終的な得点差はわずか0.103。どこでも拾うことができたわずかな得点差ですが、ここではタラレバは無用でしょう。ロシア、日本、中国ともに小さなミスは複数ありましたが、いずれも落下などの大きなミスはなく、全力を尽くした素晴らしい団体決勝でした。ロシアは1996年アトランタオリンピック以来25年ぶりの団体金メダルとなりました。そして、日本は若いチームで本当によく戦ったと思います。2024年パリオリンピックに向け、今後の団体の戦いも非常に楽しみです。体操ニッポン、銀メダルおめでとうございます!
この記事へのコメント
joshiki77
「惜しかった」という言葉をかけることすら無粋と思える程に日本代表の4人は頑張っていましたし、結果を出してくれました。
萱選手の安定感、谷川選手の爆発力、北園選手・橋本選手の急成長がまさに光った試合だったと思います。
橋本選手の鉄棒が終わった直後に4人が抱き合って喜んでいた姿を見て、アテネ五輪で冨田選手の鉄棒が終わった直後団体メンバーが抱き合って喜んでいた姿を思い出しました。
あのシーンが今回の団体の全てだったと思います。
Ka.Ki.
かみん
長年の課題ですが、日本の団体は吊り輪のポイントゲッターが必要ですね。吊り輪で安定して15点を超えて他の種目を1~2こなすか、他の種目を2~3こなしつつ、吊り輪で15点近くに乗せられる選手が欲しいところです。橋本・萱・北園の3人が吊り輪での高得点が難しい状況では、吊り輪の強化が必須だと思います。なかなか難しそうですが。。。
Ka.Ki.