Individual Apparatus World Cup Final Round
いよいよ6月23~26日に種目別ワールドカップシリーズの最終戦となるドーハ大会が開催されます。当初3月に開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響により6月に延期されていた大会です。
この大会を持って種目別ワールドカップシリーズの全大会が終了し、東京オリンピックの種目別ワールドカップシリーズ枠の出場資格が決まります。各種目のスペシャリストが、当初の予定で足かけ3年、結果的に足かけ4年の長きに渡り競ってきた戦いに決着が着く注目の大会と言えるでしょう。
そのシステムは以前に書いた記事を参照していただきたいですが、オリンピックの出場資格を得られるのは各種目ランキング最上位の1人だけ、さらには全種目を通じて1国1人までという非常に狭き門となっています。
今回はそのランキングがどうなっているのかおさらいし、オリンピック出場資格の行方を確認しておきたいと思います。
現時点でのランキングは以下のとおりです。
2018/2019 | 2019-2021 | |||||||||
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GER | AUS | AZE | QAT | GER | AUS | AZE | QAT | T | ||
ゆか FX | ||||||||||
1. | ZAPATA Rayderley (ESP) | 25 | 30 | 30 | - | 85 | ||||
2. | SORAVUO Emil (FIN) | 18 | - | 25 | 25 | - | - | 68 | ||
3. | PROKOPEV Kirill (RUS) | - | - | - | 14 | 25 | 25 | 64 | ||
4. | SCHMIDT Casimir (NED) | 30 | 20 | - | - | - | - | 8 | 58 | |
5. | REMKES Chiristopher (AUS) | - | 18 | 18 | 18 | - | - | - | 54 | |
6. | RYU Sunghyun (KOR) | - | - | - | - | - | 30 | 20 | 50 | |
あん馬 PH | ||||||||||
1. | 翁浩 WENG Hao (CHN) | 30 | 30 | - | 30 | 90 | ||||
2. | 亀山耕平 (JPN) | - | - | 30 | 30 | 20 | - | 80 | ||
3. | KEIKHA Saeedreza (IRI) | 25 | - | 20 | - | 25 | 70 | |||
4. | 今林開人 (JPN) | - | - | 14 | 25 | 25 | - | - | 64 | |
5. | MERDINYAN Harutyun (ARM) | 20 | - | - | 18 | 20 | - | - | 58 | |
5. | NEDOROSCIK Stephen (USA) | - | - | - | 16 | 12 | 30 | - | 58 | |
つり輪 SR | ||||||||||
1. | 劉洋 LIU Yang (CHN) | 30 | 30 | - | - | 30 | - | 90 | ||
2. | PETROUNIAS Eleftherios (GRE) | - | - | - | - | 25 | 30 | 30 | 85 | |
3. | 尤浩 YOU Hao (CHN) | 25 | 25 | 18 | - | - | - | 68 | ||
4. | TULLOCH Courtney (GBR) | 18 | 30 | 18 | 66 | |||||
5. | ZAHRAN Ali (EGY) | 18 | 20 | 16 | 54 | |||||
6. | DAVTYAN Vahagn (ARM) | 14 | - | - | 20 | 16 | - | - | 50 | |
6. | 蘭星宇 LAN Xingyu (CHN) | - | - | - | 30 | - | - | 20 | 50 | |
跳馬 VT | ||||||||||
1. | SHIN Jeahwan (KOR) | - | 25 | 30 | 30 | 85 | ||||
2. | 米倉英信 (JPN) | 25 | 30 | - | - | 20 | 75 | |||
2. | VEGA LOPEZ Jorge (GUA) | 20 | - | 30 | 25 | 75 | ||||
4. | MEDVEDEV Andrey (ISR) | - | 18 | - | 20 | 25 | 63 | |||
5. | SHARAMKOU Yahor (BLR) | - | 18 | 25 | 18 | 61 | ||||
6. | REMKES Chiristopher (AUS) | - | 20 | 20 | 20 | - | - | - | 60 | |
平行棒 PB | ||||||||||
1. | 尤浩 YOU Hao (CHN) | 30 | - | 30 | - | 30 | 90 | |||
1. | POLIASHOV Vladislav (RUS) | - | - | 30 | 30 | 30 | 90 | |||
3. | MORGANS Mitchell (AUS) | 25 | 25 | 18 | 68 | |||||
4. | DINH Phuong Thanh (VIE) | - | - | 20 | - | 25 | 20 | 65 | ||
5. | KOUDINOV Mikhail (NZL) | - | 18 | - | - | - | 12 | 18 | 48 | |
6. | GOBAUX Julien (FRA) | 25 | - | - | 10 | - | - | - | 35 | |
鉄棒 HB | ||||||||||
1. | ZONDERLAND Epke (NED) | 30 | 30 | - | 30 | 90 | ||||
1. | 宮地秀享 (JPN) | 30 | 30 | 30 | - | 90 | ||||
3. | MORGANS Mitchell (AUS) | 18 | 25 | 25 | 68 | |||||
4. | ROSTOV Alexey (RUS) | - | - | 18 | 20 | 25 | 63 | |||
5. | MACCHINI Carlo (ITA) | 18 | - | 16 | 20 | - | - | - | 54 | |
6. | 張成龍 ZHANG Chenglong (CHN) | - | 20 | 18 | 14 | - | - | 52 |
種目ごとに見ていきますが、まずは説明が簡単な種目から。ゆかは、最終戦を待たずしてサパタ(スペイン)が出場を確定させています。ランキング2位のソラヴォ(フィンランド)が最終戦で30ポイントを取っても届かないため(そもそもエントリーしていないようですが)です。
鉄棒もゾンダーランド(オランダ)が出場確定です。上の表だけ見ると宮地秀享が同じ90ポイントで並んでいますが、このような場合には「ランキングの対象となった3大会の演技の決定点の合計が高い選手を上位とする」と定められています。ゾンダーランドのランキング対象3大会の決定点の合計は44.399、宮地のそれは43.966であるため、ゾンダーランドのタイブレイクとなります。宮地が最終戦で14.733を超える得点を出せばオリンピック出場の可能性もあったわけですが、宮地はドーハ大会に出場しません。この状況を受け、ゾンダーランドもドーハ大会の出場を見送っています。
ここからは1国1人までという条件が複雑に絡んできます。1つの国で複数の選手がランキング最上位となった場合は「それぞれの種目における、全ての大会のポイントの平均が高い選手が優先される」と種目間タイブレイクの方法が定められています。これまでのシリーズで予選落ちして0ポイントだった場合のポイントも影響してくるのです。
平行棒は尤浩(中国)とポリアショフ(ロシア)がともに90ポイントで並んでいますが、ランキング対象3大会の決定点で尤浩がタイブレイクしています。ロシア勢はドーハ大会にエントリーしていないため、尤浩がランキング1位を確定させています。尤浩の全ての大会のポイント合計は135。ドーハ大会で優勝すると165ポイント、平均27.5ポイントです。
つり輪は劉洋(中国)の90ポイントをペトロウニアス(ギリシャ)が85ポイントで猛追。劉洋のランキング対象3大会の決定点の合計は45.499。ペトロウニアスは15.333を超える得点で優勝する必要があります。一方、劉洋が優勝した場合は、全ての大会のポイント合計は145ポイント、平均29ポイントです。
あん馬は翁浩(中国)の90ポイントを亀山耕平が80ポイントで追っています。翁浩のランキング対象3大会の決定点の合計は45.932。亀山は15.299を超える得点で優勝すればランキング1位となります。一方、翁浩が優勝した場合は、全ての大会のポイント合計は175ポイント、平均25ポイントです。
よって、つり輪で劉洋が優勝した場合は中国代表は劉洋、ペトロウニアスが優勝した場合は中国代表は尤浩になるはずです。つり輪は落下など大きな失敗が少ない種目なので、このどちらかに落ち着く可能性は高く、翁浩があん馬で優勝したとしても中国代表になる可能性は低いと思われます。亀山にチャンスが回ってくることになるのです。
そして跳馬です。シン・ジェファン(韓国)が85ポイントでトップ、米倉英信とベガ(グアテマラ)が75ポイントで追っています。シン・ジェファンのランキング対象3大会の決定点の合計は44.315。米倉は15.086を超える得点で優勝する必要があります。国内大会では15点台を連発していた米倉ですが、ドーハ大会ではどうでしょうか。ベガは15.383を超える得点が必要になり、ちょっと苦しい状況です。また、シン・ジェファンが14.566を超える得点を出して2位に入った場合は、決定点の合計が上がりますので、米倉に必要な得点もそれだけ上がるということになります。
最後は亀山と米倉の日本代表争いになります。両者ともにドーハ大会で優勝した場合は、亀山の全ての大会のポイント合計は110ポイント、平均22ポイント。米倉の全ての大会のポイント合計は123ポイント、平均20.5ポイントとなります。一見、亀山が有利な気がしてきますが、そこは落下と隣り合わせのあん馬、何が起こるか分かりません。仮に亀山が3位になった場合は合計100ポイント、平均20ポイントとなり米倉に逆転されてしまいます。
今回のオリンピックの出場資格システムは非常に複雑ですが、その一部である種目別ワールドカップシリーズ枠の決め方もとても複雑です。あらゆる可能性について言及できたわけではありませんが、おおむねこのような展望になると思われます。全てが一気に決まると言っても過言ではない種目別ワールドカップシリーズ最終戦・ドーハ大会。とにかく注目です。
チェックは十分にしたつもりですが、間違いがあったらすいません。また、出場資格システムについては、解釈に間違いがないとも限りませんので、あらかじめご了承ください。
この記事へのコメント
マイコ
翁浩が中国内でのタイブレイクで厳しい状況にあることを考えると、
亀山選手が現時点で鞍馬の1位にいると考えてよいでしょう。
日本内でのタイブレイクを考えると
本大会に出場することは3位以下になってポイントを下げるリスクがあるとも言えます。
一方で、Keikha選手が優勝すると、ポイントで並ばれるので、
本大会に出て優勝を阻止する必要があるとも言えます。
本記事を見るまでは、日本の両選手がどのような状況にあり
どういった結果であれば出場権を得られるのかがわかっていませんでしたが
複雑難解な選考基準がクリアになりました。
ありがとうございます。
Ka.Ki.
ケイハ選手については、ポイントで亀山選手に並んだとしても、ランキング対象3大会の決定点の合計で抜かすことは考えにくいと思い記事にはしませんでした。すいません。
イチ
亀山選手は出場するメリットが無いように思えてしまいます。出場しなければならない制約か何かあるのでしょうか?
Ka.Ki.
制約や義務はないと思います。強いて言えば、ケイハ選手の存在でしょうか。ケイハ選手は15.300を超える得点で優勝することが必要なので簡単ではないと思うのですが。