2021 JPN Delegate for Olympics
全日本種目別選手権が終わり、東京オリンピックの代表選手が決定しました。橋本大輝、萱和磨に次ぐ団体代表には谷川航と北園丈琉が、そして個人代表には内村航平が選出されています。選考の結果をあらためて確認しておきましょう。
団体代表選考の方法はこちらの記事に書いたとおりです。おさらいになりますが、ベースとなる橋本、萱のチーム得点は以下のとおり。例によって、一番左列の数字はNHK杯順位です(以下、同じ)。
FX | PH | SR | VT | PB | HB | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 橋本大輝 | 14.900 | 14.599 | 13.866 | 15.183 | 14.933 | 14.750 |
2 | 萱和磨 | 14.250 | 14.866 | 14.299 | 14.516 | 14.766 | 14.399 |
そして全日本種目別を終え、NHK杯5位以内の選手とNHK杯10位以内の選手による組合せでチーム得点を算出したところトップ3は以下のようになりました。
1st | ||||||||
FX | PH | SR | VT | PB | HB | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 橋本大輝 | 14.900 | 14.599 | 13.866 | 15.183 | 14.933 | 14.750 | |
2 | 萱和磨 | 14.866 | 14.299 | 14.399 | ||||
3 | 谷川航 | 14.400 | 14.255 | 15.377 | 14.944 | |||
9 | 北園丈琉 | 14.655 | 14.811 | 14.644 | 15.011 | 14.722 | ||
Total | 43.955 | 44.276 | 42.420 | 45.205 | 44.888 | 43.871 | 264.615 | |
2nd | ||||||||
FX | PH | SR | VT | PB | HB | |||
1 | 橋本大輝 | 14.900 | 14.599 | 13.866 | 15.183 | 14.933 | 14.750 | |
2 | 萱和磨 | 14.250 | 14.866 | 14.299 | 14.766 | 14.399 | ||
3 | 谷川航 | 14.400 | 14.255 | 15.377 | 14.944 | |||
6 | 杉野正尭 | 15.000 | 14.633 | 14.800 | ||||
Total | 43.550 | 44.465 | 42.420 | 45.193 | 44.643 | 43.949 | 264.220 | |
3rd | ||||||||
FX | PH | SR | VT | PB | HB | |||
1 | 橋本大輝 | 14.900 | 14.599 | 13.866 | 15.183 | 14.933 | 14.750 | |
2 | 萱和磨 | 14.866 | 14.299 | 14.516 | 14.766 | 14.399 | ||
5 | 武田一志 | 14.344 | 14.711 | |||||
9 | 北園丈琉 | 14.655 | 14.811 | 14.644 | 15.011 | 14.722 | ||
Total | 43.900 | 44.276 | 42.876 | 44.343 | 44.710 | 43.871 | 263.975 |
最上位は谷川航と北園丈琉の2人。ある程度予想はしていましたが、北園の活躍は目を見張るものがありました。北園は全日本決勝でミスが出ているため、本来の演技をすればどんどん貢献度が上がっていきます。谷川航・北園の組合せで大会前4番手に付けていた順位は、予選終了時点ですでに2番手にまで上がっていました。
そして決勝。谷川・北園は1種目目のゆかを終えた時点で早くもトップに。2種目目のあん馬では杉野正尭にミスが出ます。北園はあん馬でも高得点を出し、この時点で杉野が残り種目の鉄棒で15.019以上というこれまで出したことのない高得点を出さなければ逆転は不可能になっていました。北園の代表入りは決勝2種目目でほぼ確実となっていたのです。
北園は全日本種目別予選5種目、決勝4種目すべてで高得点をたたき出し、見事にNHK杯9位からジャンプアップして団体代表の座を勝ち取りました。谷川航も平行棒などで得点を伸ばしました。団体代表の橋本、萱、谷川航、北園は、現時点でまさに最強のメンバーが選ばれたと言えるでしょう。オリンピックでの活躍を期待したいと思います。
続いて個人代表選考です。団体代表選考の方法はこちらの記事に書いたとおりです。最終的なポイントは以下のとおりとなりました。
全日本 予選 | 全日本 決勝 | NHK杯 | 種目別 予選 | 種目別 決勝 | 計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
南一輝 | ゆか | 15.433 30 | 15.200 5 | 15.166 5 | 15.300 30 | 70 | |
白井健三 | ゆか | 15.100 5 | 15.133 5 | 10 | |||
土井陵輔 | ゆか | 15.066 5 | 5 | ||||
市口大和 | あん馬 | 15.433 20 | 15.766 40 | 60 | |||
長野託也 | つり輪 | 15.033 10 | 10 | ||||
髙橋一矢 | つり輪 | 15.000 10 | 10 | ||||
神本雄也 | つり輪 | 15.166 30 | 30 | ||||
米倉英信 | 跳馬 | 15.166 40 | 15.266 40 | 15.050 30 | 15.016 30 | 15.150 30 | 170 |
安里圭亮 | 跳馬 | 15.033 30 | 15.016 30 | 15.166 40 | 100 | ||
田中佑典 | 平行棒 | 15.400 10 | 10 | ||||
杉本海誉斗 | 平行棒 | 15.400 10 | 10 | ||||
内村航平 | 鉄棒 | 15.166 30 | 15.466 40 | 15.333 40 | 15.766 40 | 15.100 20 | 170 |
前田風丞 | 鉄棒 | 15.300 40 | 40 | ||||
杉野正尭 | 鉄棒 | 15.000 20 | 20 |
橋本が全日本種目別決勝の鉄棒で15.133というハイスコアを出し、ランキング1位の得点が入れ替わっていますが、これによる各選手のポイントの変動はありませんでした。内村のNHK杯の得点15.333もぎりぎりで「1位かつ0.2点以上の差」をキープしています[1]。
[1] 一部報道で「橋本が0.001高い15.134だった場合は、内村の五輪はなかった」というようなことが書かれていますが、採点の都合上15.134という得点はあり得ません。(E審判の人数によって異なりますが、今回の場合は)15.133の次に高い得点は15.166になります。
全日本種目別は全体的に大盤振る舞いといった感じで高得点が連発しました。この大会で初めてポイントを得た選手も少なくありません。しかし、ポイントは5試合の合計で争われます。最終ポイントは米倉英信と内村航平が170ポイントという同点で並びました。
この場合、ランキング4位の得点との差の合計でタイブレイクされます。ランキングは先日の記事を参照していただきたいですが、跳馬の4位は14.883、鉄棒の4位は14.900なので、これらとの差は以下のとおりとなります。
全日本 予選 | 全日本 決勝 | NHK杯 | 種目別 予選 | 種目別 決勝 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
米倉英信 | 0.283 | 0.383 | 0.167 | 0.133 | 0.267 | 1.233 |
内村航平 | 0.266 | 0.566 | 0.433 | 0.866 | 0.200 | 2.331 |
というわけで、タイブレイクポイントでは内村の圧勝となり、個人枠には内村が選出されました。2008年北京オリンピックから4大会連続の代表という偉業となります。
内村の全日本種目別決勝の鉄棒はアドラー1回ひねりで振り戻りが出るなど少なからずミスがあり、本人も納得できない演技だったようですが、代表を決めたのはこれまでの演技の積み重ねです。高難度のブレットシュナイダー(H)を2021年に入ってからだけでも5試合連続でミスなく決め、種目別の予選と決勝では着地も止めてみせました。米倉との息詰まるギリギリの戦いはファンを存分に痺れさせたと思います。オリンピックでもきっと素晴らしい演技を決めてくれることでしょう。
さて、オリンピック代表選考はこれで終わりではありません。種目別ワールドカップシリーズの枠がまだ残っています。延期されていた最終戦のドーハ大会が6月23~26日に開催されることが決定しました。こちらのランキングではあん馬で亀山耕平が、跳馬で米倉英信がともに2位に付けており、最終戦で優勝すればランキング1位となりタイブレイクによるオリンピック出場の可能性があります。こちらのランキング争いについてもあらためて記事にできればと思っています。
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