オリンピック代表選考の結果について

2021 JPN Delegate for Olympics


全日本種目別選手権が終わり、東京オリンピックの代表選手が決定しました。橋本大輝、萱和磨に次ぐ団体代表には谷川航北園丈琉が、そして個人代表には内村航平が選出されています。選考の結果をあらためて確認しておきましょう。



団体代表選考の方法はこちらの記事に書いたとおりです。おさらいになりますが、ベースとなる橋本、萱のチーム得点は以下のとおり。例によって、一番左列の数字はNHK杯順位です(以下、同じ)。

FXPHSRVTPBHB
1橋本大輝14.90014.59913.86615.18314.93314.750
2萱和磨14.25014.86614.29914.51614.76614.399


そして全日本種目別を終え、NHK杯5位以内の選手とNHK杯10位以内の選手による組合せでチーム得点を算出したところトップ3は以下のようになりました。

1st
FXPHSRVTPBHB
1橋本大輝14.90014.59913.86615.18314.93314.750
2萱和磨14.86614.29914.399
3谷川航14.40014.25515.37714.944
9北園丈琉14.65514.81114.64415.01114.722
Total43.95544.27642.42045.20544.88843.871264.615

2nd
FXPHSRVTPBHB
1橋本大輝14.90014.59913.86615.18314.93314.750
2萱和磨14.25014.86614.29914.76614.399
3谷川航14.40014.25515.37714.944
6杉野正尭15.00014.63314.800
Total43.55044.46542.42045.19344.64343.949264.220

3rd
FXPHSRVTPBHB
1橋本大輝14.90014.59913.86615.18314.93314.750
2萱和磨14.86614.29914.51614.76614.399
5武田一志14.34414.711
9北園丈琉14.65514.81114.64415.01114.722
Total43.90044.27642.87644.34344.71043.871263.975


最上位は谷川航北園丈琉の2人。ある程度予想はしていましたが、北園の活躍は目を見張るものがありました。北園は全日本決勝でミスが出ているため、本来の演技をすればどんどん貢献度が上がっていきます。谷川航・北園の組合せで大会前4番手に付けていた順位は、予選終了時点ですでに2番手にまで上がっていました。

そして決勝。谷川・北園は1種目目のゆかを終えた時点で早くもトップに。2種目目のあん馬では杉野正尭にミスが出ます。北園はあん馬でも高得点を出し、この時点で杉野が残り種目の鉄棒で15.019以上というこれまで出したことのない高得点を出さなければ逆転は不可能になっていました。北園の代表入りは決勝2種目目でほぼ確実となっていたのです。

北園は全日本種目別予選5種目、決勝4種目すべてで高得点をたたき出し、見事にNHK杯9位からジャンプアップして団体代表の座を勝ち取りました。谷川航も平行棒などで得点を伸ばしました。団体代表の橋本、萱、谷川航、北園は、現時点でまさに最強のメンバーが選ばれたと言えるでしょう。オリンピックでの活躍を期待したいと思います。



続いて個人代表選考です。団体代表選考の方法はこちらの記事に書いたとおりです。最終的なポイントは以下のとおりとなりました。

全日本
予選
全日本
決勝
NHK杯種目別
予選
種目別
決勝

南一輝ゆか15.433
30
15.200
5
15.166
5
15.300
30

70
白井健三ゆか15.100
5
15.133
5

10
土井陵輔ゆか15.066
5

5
市口大和あん馬15.433
20
15.766
40

60
長野託也つり輪15.033
10

10
髙橋一矢つり輪15.000
10

10
神本雄也つり輪15.166
30

30
米倉英信跳馬15.166
40
15.266
40
15.050
30
15.016
30
15.150
30

170
安里圭亮跳馬15.033
30
15.016
30
15.166
40

100
田中佑典平行棒15.400
10

10
杉本海誉斗平行棒15.400
10

10
内村航平鉄棒15.166
30
15.466
40
15.333
40
15.766
40
15.100
20

170
前田風丞鉄棒15.300
40

40
杉野正尭鉄棒15.000
20

20


橋本が全日本種目別決勝の鉄棒で15.133というハイスコアを出し、ランキング1位の得点が入れ替わっていますが、これによる各選手のポイントの変動はありませんでした。内村のNHK杯の得点15.333もぎりぎりで「1位かつ0.2点以上の差」をキープしています[1]

[1] 一部報道で「橋本が0.001高い15.134だった場合は、内村の五輪はなかった」というようなことが書かれていますが、採点の都合上15.134という得点はあり得ません。(E審判の人数によって異なりますが、今回の場合は)15.133の次に高い得点は15.166になります。


全日本種目別は全体的に大盤振る舞いといった感じで高得点が連発しました。この大会で初めてポイントを得た選手も少なくありません。しかし、ポイントは5試合の合計で争われます。最終ポイントは米倉英信内村航平が170ポイントという同点で並びました。

この場合、ランキング4位の得点との差の合計でタイブレイクされます。ランキングは先日の記事を参照していただきたいですが、跳馬の4位は14.883、鉄棒の4位は14.900なので、これらとの差は以下のとおりとなります。

全日本
予選
全日本
決勝
NHK杯種目別
予選
種目別
決勝

米倉英信0.2830.3830.1670.1330.2671.233
内村航平0.2660.5660.4330.8660.2002.331

というわけで、タイブレイクポイントでは内村の圧勝となり、個人枠には内村が選出されました。2008年北京オリンピックから4大会連続の代表という偉業となります。

内村の全日本種目別決勝の鉄棒はアドラー1回ひねりで振り戻りが出るなど少なからずミスがあり、本人も納得できない演技だったようですが、代表を決めたのはこれまでの演技の積み重ねです。高難度のブレットシュナイダー(H)を2021年に入ってからだけでも5試合連続でミスなく決め、種目別の予選と決勝では着地も止めてみせました。米倉との息詰まるギリギリの戦いはファンを存分に痺れさせたと思います。オリンピックでもきっと素晴らしい演技を決めてくれることでしょう。



さて、オリンピック代表選考はこれで終わりではありません。種目別ワールドカップシリーズの枠がまだ残っています。延期されていた最終戦のドーハ大会が6月23~26日に開催されることが決定しました。こちらのランキングではあん馬で亀山耕平が、跳馬で米倉英信がともに2位に付けており、最終戦で優勝すればランキング1位となりタイブレイクによるオリンピック出場の可能性があります。こちらのランキング争いについてもあらためて記事にできればと思っています。

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