オリンピック個人代表選考の行方は

2021 JPN Olympics Individual Selection


6月5〜6日に開催される全日本種目別選手権ではオリンピックの個人代表も決まります。

東京オリンピックの代表は団体代表が4人、それ以外に(団体出場資格がある国は)個人枠での代表が最大2人となっています。日本は団体出場資格の他、個人代表枠を1つ確定させています。この枠は内村航平が獲得を目指す枠にもなるものです。

その選考概要は日本体操協会公式サイトこちらのPDFに簡潔にまとめられています。簡単に説明すると日本体操協会が独自に作成した世界ランキングに対し、全日本(予選・決勝)、NHK杯、全日本種目別(予選・決勝)の5試合の得点を当てはめ、その順位に応じてポイントを付与し、総ポイントの最上位者を選出するというものです。

今回はオリンピックの個人代表選考の方法をおさらいし、現時点での状況を確認しておきたいと思います。



まず、協会が作成した世界ランキングを確認しておく必要があります。このランキングは2019年世界選手権と2019-2021年種目別ワールドカップシリーズ3大会(ドーハ大会が全日本種目別の期日までに開催されないため、種目別ワールドカップシリーズは3大会が対象になります)の計4大会の得点を対象として作成されます。

また、2021年の全日本選手権、NHK杯、全日本種目別選手権の国内3大会についても団体代表選手の得点はランキングの対象となります。よって、最終的には全日本種目別が終わらないとランキング自体が確定しないわけですが、現時点での暫定ランキングは以下のとおりとなっています。

ゆか FX
1.YULO Carlos Edriel (PHI)15.3002019年世界選手権:種目別
2.DALALOYAN Artur (RUS)15.2002019年世界選手権:個人総合
3.DOLGOPYAT Artem (ISR)15.2002019年世界選手権:種目別
4.NAGORNYY Nikita (RUS)15.0412019年世界選手権:個人総合
5.肖若騰 XIAO Ruoteng (CHN)15.0332019年世界選手権:団体決勝

あん馬 PH
1.WHITLOCK Max (GBR)15.5002019年世界選手権:種目別
2.李智凱 LEE Chih-Kai (TPE)15.4332019年世界選手権:種目別
3.翁浩 WENG Hao (CHN)15.4332020年ワールドカップ・バクー大会:予選
4.MCCLENAGHAN Rhys (IRL)15.4002019年世界選手権:種目別
5.NEDOROSCIK Stephen (USA)15.4002020年ワールドカップ・メルボルン大会:決勝

つり輪 SR
1.劉洋 LIU Yang (CHN)15.1332019年ワールドカップ・コトブス大会:決勝
2.PETROUNIAS Eleftherios (GRE)15.1002020年ワールドカップ・バクー大会:予選
3.COLAK Ibrahim (TUR)14.9332019年世界選手権:種目別
4.蘭星宇 LAN Xingyu (CHN)14.9332020年ワールドカップ・バクー大会:予選
5.LODADIO Marco (ITA)14.9002019年世界選手権:種目別

跳馬 VT
1.NAGORNYY Nikita (RUS)14.9662019年世界選手権:種目別
2.DALALOYAN Artur (RUS)14.9332019年世界選手権:種目別
3.YANG Hak-seon (KOR)14.9332019年世界選手権:予選
4.SHIN Jeahwan (KOR)14.8832020年ワールドカップ・バクー大会:予選
5.RADIVILOV Igor (UKR)14.8492019年ワールドカップ・コトブス大会:決勝

平行棒 PB
1.鄒敬園 ZOU Jingyuan (CHN)16.3832019年世界選手権:団体決勝
2.VERNIAIEV Oleg (UKR)15.4752019年世界選手権:個人総合
3.尤浩 YOU Hao (CHN)15.4002019年ワールドカップ・コトブス大会:決勝
4.POLIASHOV Vladislav (RUS)15.3662019年ワールドカップ・コトブス大会:決勝
5.MIKULAK Samuel (USA)15.3252019年世界選手権:個人総合

鉄棒 HB
1.橋本大輝 HASHIMOTO Daiki (JPN)15.0002021年全日本選手権:決勝
2.唐嘉鴻 TANG Chia-Hung (TPE)14.9332019年世界選手権:予選
3.MARIANO Arthur (BRA)14.9002019年世界選手権:種目別
4.ZONDERLAND Epke (NED)14.9002020年ワールドカップ・メルボルン大会:決勝
5.MIKULAK Samuel (USA)14.8662019年世界選手権:予選


このランキングに、個人枠で出場を目指す選手の全日本(予選・決勝)、NHK杯、全日本種目別(予選・決勝)の5試合の得点を当てはめ、その順位に応じてポイントを付与していきます。付与されるポイントは以下のとおりです。

順位1位かつ0.2点
以上の差
1位2位3位4位
ポイント403020105


現時点で、世界ランキングに食い込みポイントを得た選手は8人です。こちらもあくまで暫定のポイントになります。

全日本
予選
全日本
決勝
NHK杯種目別
予選
種目別
決勝

南一輝ゆか15.433
30
15.200
5

35
白井健三ゆか15.100
5

5
長野託也つり輪15.033
10

10
髙橋一矢つり輪15.000
10

10
米倉英信跳馬15.166
40
15.266
40
15.050
30

110
安里圭亮跳馬15.033
30
15.016
30

60
内村航平鉄棒15.166
30
15.466
40
15.333
40

110
前田風丞鉄棒15.300
40

40


というわけで、全日本種目別におけるオリンピック個人代表争いは、実質的に内村航平米倉英信の一騎打ちと言っていい状況です。暫定ながら、ともにこれまでの3試合でランキング1位に0.2点または1位という得点を出し、計110ポイントを上げています。全日本種目別では内村と米倉の戦いからも目が離せません。


一方、世界ランキング自体がまだ確定したものではないということも忘れてはなりません。先にも書いたように、団体代表選手の得点もランキングの対象となるため、最終的には全日本種目別が終わらないとランキング自体が確定しません。

現に橋本大輝が全日本決勝の鉄棒で15.000を出していますが、橋本が団体代表に決定した時点でこのスコアがランキング対象となり1位になっています。そして、内村の全日本予選のスコア15.166が「1位かつ0.2点以上の差」ではなくなり、40であった暫定ポイントが30に下がるということが起こっています。

最終的な結果は全日本種目別が終わるまでまったく分かりません。団体代表とともに個人代表でも激しい戦いが繰り広げられ、双方の戦いは無関係ではなく密接に関連しているということが言えると思います。



チェックは十分にしたつもりですが、間違いがあったらすいません。 また、代表選考の方法については、解釈に間違いがないとも限りませんし、このようなプロセスで選考されるのかどうかも分かりません。あらかじめご了承ください。

(2021年6月3日 記事を一部修正しました)

この記事へのコメント

  • 名無し

    >> 例えば、全日本種目別の跳馬には谷川航も出場しますが、ここで谷川航が15.000以上の得点を出し、かつ団体代表にも決定したとします(いずれも可能性は大です)。するとこの得点はランキング1位に躍り出ることになります。そうなるとどうなるか、米倉の全日本予選の得点15.166が「1位かつ0.2点以上の差」ではなくなり、40の暫定ポイントは30に下がることになるのです。

    谷川航は予選の1跳躍しか行わないので、跳馬の世界ランキングには影響しないと思われます。
    2021年06月03日 10:33
  • Ka.Ki.

    ご指摘ありがとうございます。
    2021年06月03日 21:38
  • logi

    谷川航選手は五輪本番では跳馬2跳躍するのですかね。まだ選考を通るとも決まってませんが…。リセグァン2とロペスで十分にメダルを狙える実力がありますし、明日からの種目別でも見てみたかったなと思います。

    また、非常に細かいところですが前田選手の15.3は全日本予選ではなく決勝の得点ですね。
    2021年06月04日 12:47
  • Ka.Ki.

    まぁ谷川航選手はほぼ確実でしょうね。オリンピックでは是非2本跳んでほしいと思います。

    ご指摘ありがとうございます。修正させていただきます。
    2021年06月04日 22:11