2020年友情と絆の大会レポート

2020 Friendship and Solidarity Competition Tokyo (JPN) Report


オリンピック延期決定後、体操競技のみならずオリンピック競技として国内では初めてとなる国際大会が開催されました。

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その名も「友情と絆の大会」。日本、中国、ロシア、アメリカから男女各4名(アメリカは各3名)の選手が出場。男女混合、国混合のFriendshipチームとSolidarityチームに分かれて競技を行うオールスターゲームです。各選手は何種目演技してもよく、各種目を何人が演技するのも自由という競技形式。チーム得点は各種目上位3人の得点が採用されます。

新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、9月の全日本シニア選手権では全席指定による観客数制限や大声での応援の禁止などの対策が取られましたが、今回は国際大会ということで各国の選手たちにも行動範囲の制限や毎日のPCR検査などの厳しい対策が課されました。東京オリンピックのモデルケースになる重要な大会ということで、会場ではトーマス・バッハIOC会長のビデオメッセージが流され、来賓には小池百合子東京都知事や橋本聖子東京オリンピック担当大臣らも臨席していました。

目は1つしかないので男子中心のレポートとなります。その男子すら両チームが同時に演技をするため、得点表示も含めると1つの目で追うのはかなり難しい試合展開でした。ローテーションはつり輪、跳馬からのスタートという変則的なもの。ゆかと跳馬が男女共用となるためでしょうか。

#1 Friendshipチーム:つり輪 SR / Solidarityチーム:跳馬 VT

Friendshipチーム:アルトゥール・ダラロヤン(ロシア)が14.500と好調なスタート。萱和磨、神本雄也も安定した演技で続く。張博恒(中国)が着地まで止めて14.700というハイスコアをマーク。

Solidarityチーム:いきなり内村航平の登場。シューフェルト(D:5.2)をわずかな跳ねで収めて14.500という高得点を出す。ドミトリー・ランキン(ロシア)とニキータ・ナゴルニー(ロシア)がともに着地は動くものの高い得点で続いた。谷川航はブラニク(D:5.6)を跳ぶが、着地が低くなり後ろに大きく乱れてしまった。

1.Friendshipチーム86.200
2.Solidarityチーム85.600


#2 Friendshipチーム:跳馬 VT / Solidarityチーム:平行棒 PB

Friendshipチーム:ダラロヤンはリ・セグァン2に挑むが潰れてしまい14.100に留まる。アレクセイ・ロストフ(ロシア)はドリッグス(D:5.2)。萱はロペス(D:5.6)だが大きく1歩乱れてラインを割ってしまう。演技をしたのはこの3人でそのまま得点が採用される。

Solidarityチーム:尹德行(中国)が高いバブサー(E)を見せ、着地もほぼ止める。ナゴルニーがDスコア6.4の構成をまとめて14.700を出すと、谷川航は同じDスコア6.4を着地まで止めて14.800というハイスコアを出してみせた。

1.Friendshipチーム169.000
2.Solidarityチーム167.400


#3 Friendshipチーム:平行棒 PB / Solidarityチーム:鉄棒 HB

Friendshipチーム:神本がDスコア6.6の構成をまとめて14.600の高得点を出すと、萱も着地まで止めて14.700で続く。ユル・モルダウアー(アメリカ)とシェーン・ウィスカス(アメリカ)の2人が14.000で並ぶ。ダラロヤンはチッペルト(D)で器械上落下があったか。得点を落とす。

Solidarityチーム:3人目に内村が登場。ブレットシュナイダー(H)を見事に決め、Dスコア6.6の構成を完遂。着地はわずかに跳ねるが15.200と今大会唯一の15点台を出す。谷川航が全日本シニアと同じ構成で14.400を出して続く。

1.Solidarityチーム255.100
2.Friendshipチーム252.000


#4 Friendshipチーム:鉄棒 HB / Solidarityチーム:ゆか FX

Friendshipチーム:侍聰(中国)はコールマン(E)の後の倒立で詰まる。萱は全日本シニアと同じDスコア6.1の構成で14.300を出すが、続く神本はコールマン(E)で落下してしまう。Friendshipチームは8人全員が演技するが落下が相次ぎ、この神本の得点も採用されることに。

Solidarityチーム:ナゴルニーはリューキン(H)を回避するが、ランキンはリューキン、シライ/グエン(F)など盛り盛りの構成を見せる。内村はかなり抜いた構成。2回宙返りも入れず0.3のペナルティ(ND)で13.200。谷川航は前半が特に良好で14.200を出した。

1.Solidarityチーム337.600
2.Friendshipチーム335.900


#5 Friendshipチーム:ゆか FX / Solidarityチーム:あん馬 PH

Friendshipチーム:ダラロヤンは当初エントリーしていたが欠場。萱は従来構成のDスコア5.8を通して14.100を出す。張博恒(中国)が得意の前方1回~前方屈身ダブル(C+E)などを見せ14.300をマークした。

Solidarityチーム:内村はあん馬も抜いた構成で13.300。谷川航は全日本シニアで試みたDスコア5.9の構成を通して14.000と高い得点を出す。ポール・ジュダ(アメリカ)は開脚旋回中心の構成で魅せる。ナゴルニーは途中で旋回が揺れたが14点台を出した。

1.Solidarityチーム380.000
2.Friendshipチーム378.500


#6 Friendshipチーム:あん馬 PH / Solidarityチーム:つり輪 SR

Friendshipチーム:萱はこのところ使っているDスコア6.4の構成。14.800という高い得点を出すがさらに雄大な旋回を求めたい。モルダウアーはベルキ(E)を狙っていたか。

Solidarityチーム:馬躍(中国)は当初複数種目にエントリーしていたが演技したのはこのつり輪だけ。14.400という高い得点をマーク。ロシアの2人が高得点を出した。谷川航は振動倒立技が決まらず、着地も動いてしまう。

Solidarityチーム423.600
Friendshipチーム421.300


得点上はSolidarityチームが3種目目でFriendshipチームを逆転しそのままフィニッシュしましたが、友情と絆の大会ということもあり、閉会式では同じ色のメダルを両チームが交換するという微笑ましいエンディングとなりました。

閉会式では森喜朗東京オリンピック大会組織委員長も登場。なんとここでは2021年の世界選手権が北九州市で開催されることも発表されました。2021年世界選手権は当初コペンハーゲンで開催されることになっていましたがデンマーク体操連盟が辞退して宙に浮いていました。日本としては10年ぶりの世界選手権となります。

最後に内村が挨拶をしましたが、ここでは「オリンピックが開催できないと思っている人が多いが、『できない』ではなく『どうすればできるか』ということを皆が考えてほしい」と発言。アスリートとしてはかなり踏み込んだ発言だとは思いますが、内村ならではとも言えます。そして、オリンピック後ですが、内村としては出生地での世界選手権という「目指すべき大会」がまたできてしまったことになります。やはり内村からは目が離せそうにありません。

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