Originators : Ri Se-Gwang
今年2月に引退の報が飛び込んできました。今回の本家本元はリ・セグァン(北朝鮮)が発表した2つの跳越を取り上げます。
1つ目はリ・セグァン(ツカハラ後方かかえ込み宙返り1回ひねり)。採点規則ではツカハラとありますが、実際はカサマツから2回宙返りをする技になります。ツカハラから2回宙返り1回ひねりをする捌きは試合では見たことがありませんが、同一枠の扱いとなるはずです。

発表は2009年ユニバーシアード・ベオグラード大会とされています(1)。動画はドーハのアスパイア・ドームのもののようです。
もう1つはリ・セグァン2(前転とび前方屈身2回宙返りひねり)。採点規則では「屈身ドラグレスク」と表記されています。

発表は遅くとも動画の2008年アジア選手権・ドーハ大会。こちらは屈身ドラグレスクということで、しばらく名前は付いていなかったようです。名前が付いたのは2015年のFIG通達から。
というわけで発表はリ・セグァン2の方が先だったようです。発表時のDスコアはどちらも7.2で、リ・シャオペンと並ぶ最高難度の跳越とされました。現在は価値点のデノミがありどちらもDスコア6.0ですが、依然として最高難度の跳越の座を維持しています。
リ・セグァン選手はこの2つの跳越を武器に2014年、2015年と世界選手権を連覇。さらには2016年リオデジャネイロオリンピックの金メダルをも手にしています。その後は2018年の世界選手権も制し、今年で35歳という大ベテランでした。
現在もこの2つの跳越にチャレンジする選手は少なくありませんが、やはり難しい跳越ということで、どちらかと言えば失敗事例を目にすることが多いようです。しかし、どちらも魅力的な跳越であり、今後はこれらの跳越を用いて世界の頂点に立つフォロワーが現れてくれることを期待したいと思います。
参考文献
(1) 森井大樹:側転とびから宙返りする技に関する技術発達史的考察―<ツカハラとび>と<カサマツとび>のひねり構造の比較から―, 日本女子体育大学紀要 (2019)
この記事へのコメント
joshiki
当初の7.2というスコアは後に発表されたヤン・ハクソンが7.4だったことから低い難度に見合っていないのではないかと言われていましたね。
記事にもありますがリ・セグァン本人を含めて失敗例が多く、2014年の世界選手権では優勝しましたが、足を痛めていたのを覚えています。
ですが常に自分のアイデンティティとも言わんばかりにリ・セグァン1を回避するようなことはほとんどせず、使い続けていたのが印象的でした。
私は生粋の日本人ですが跳馬の種目別ではいつもリ・セグァン選手を応援していました。それだけに年齢を考えればありえることですが、引退の報道を目にした時は残念な気持ちになりました。
リ・セグァン2の発表の方が早かったということは知らなかったので、こういった記事は本当に価値があると感じます。本家本元シリーズは楽しみにしているシリーズですので今後も更新を期待します。以前紹介されていた記事もたまに見ていますが、使い手が時代と共に変化するのが体操の面白みでもあると思いますので、そのあたりも含めたリメイク版が投稿される事を私は密かに期待してます。
Ka.Ki.
リ・セグァン2が先だったことについては、おそらくそうだろうというに過ぎません。今後ともどうぞよろしくお願いします。