ボロビオフとヨブチェフ

Vorobiov and Jovtchev on SR


すっかりレアになってしまったつり輪の技にボロビオフとヨブチェフがあります。

十字倒立からゆっくり下ろして逆懸垂を経過し十字懸垂または中水平支持に入る力技です。十字懸垂になるボロビオフがD難度、中水平支持になるヨブチェフがE難度。どんな技か見てみましょう。実施はいずれもヨルダン・ヨブチェフ(ブルガリア)です。

まずはボロビオフ(十字倒立からゆっくり下ろして逆懸垂経過伸腕伸身逆上がり十字懸垂)。発表者はオレクサンドル・ボロビオフ(ウクライナ)ですが、本家の動画は見つけられませんでした。

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続いてヨブチェフ(十字倒立からゆっくり下ろして逆懸垂経過伸腕伸身逆上がり中水平支持)。ちょっと逆懸垂経過が曖昧な気がしますが、ヨブチェフで取れていると思われます。

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逆懸垂経過という非常に微妙な力技です。これらの技が生まれたのは2001-2004年ルールによるところが大きいと考えられます。この時代、つり輪の組合せ加点は力技の連続のみに与えられました。つり輪のスペシャリストたちはD+E+D+E+Dといった感じで次々と力技を連続し組合せ加点を稼いでいったのです。

2006年のルール改訂でつり輪の組合せ加点は上昇を伴う力技の連続に限られるようになります。この時点でボロビオフやヨブチェフの存在意義は薄れてきますが、それでも上の動画で見られるようにヨブチェフ選手はボロビオフを構成に入れていました。なお、つり輪の組合せ加点は2009年のルール改訂で完全に廃止されています。

今日、これらの技を見かけることはほとんどありません。姿勢減点の厳しい十字倒立からが要件というのもその理由でしょう。次のルール改訂ではいよいよ消えてしまうのではないかとすら思われるつり輪のレア技です。

この記事へのコメント

  • ロン

    本当に見ない技ですね、ここ10年では本当に実施されてないかも?そもそもおっしゃる通り十字倒立がまずほとんどないので……中技は中水平2回、ナカヤマ、ヤマワキ2回、ホンマ十字、上水平、振り上がり倒立2回、あたりが多くて格上げされたバランディン2すら実施はほとんど無いという……思えば十字倒立からさらに押し上げ倒立というレア技をしていた山室選手はそうとうレアな構成の持ち主だったんですね
    2020年05月05日 23:42
  • Ka.Ki.

    山室選手の押し上げ倒立は、構成上のオリジナリティを見せていた点では良かったのですが、実施面ではかなり減点を受けていたのではないかと思います。
    2020年05月08日 21:12
  • ロン

    おっしゃる通りですね、あの押し上げを身体を揺らさず行うのは至難の技だと思います。吊り輪で十字倒立が少ないのは床では十字倒立が人気というのも合わせると、吊り輪で振り上げから、というのが大きいんでしょうね。
    2020年05月09日 11:45
  • Ka.Ki.

    「吊り輪で振り上げから」とはどういうことでしょうか?
    2020年05月10日 20:30
  • ロン

    すいません、分かりづらかったですね。床では十字倒立を動かない器械である床の上で行うことができますが、吊り輪では固定されていない輪で身体を支えさらに振動や長い距離の押し上げから静止することが求められます。これが床、吊り輪の十字倒立の難しさの違い、ひいては実施数の差に現れているのでは、と思ったのです。
    2020年05月11日 01:15