Uchimura and Rule Changes
あけましておめでとうございます。いよいよ2020年東京オリンピックの年がやってきました。体操ニッポンの代表選手はまだ1人も決まっていませんので、全ての選手が悔いのないよう全力を尽くして頑張ってほしいと思います。今年もどうぞよろしくお願いします。
2019年は両肩痛に悩まされ不本意な年となってしまった内村航平ですが、オリンピック2連覇・世界選手権6連覇の体操界のキングの一挙手一投足は常に注目の的となっています。オリンピックの翌年に実施されるルール改訂においても、内村の演技がきっかけとなったと思われるものが少なくありません。どのような事例があるのか見ていきましょう。
2008年北京オリンピック、個人総合のあん馬で内村は2度落下しながらも銀メダルを獲得します。当時、落下の減点は0.8でした。19歳の若者であった内村が今日のような注目をされていたわけではありませんが、2009年のルール改訂で落下は1.0の減点に改められました。この時、金メダルの楊威(中国)は94点台で圧倒的でしたが、2位以下は10位までが91点台と団子状態。落下の減点が1.0なら内村の銀メダルはなかったことになります。
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2009年から個人総合の連覇が始まります。動画は前人未踏となる3連覇を果たした2011年世界選手権・東京大会のつり輪ですが、逆懸垂でぶら下がっている時間が長いように感じられます。2014年3月のNewsletter #27では「難度表にない姿勢で2秒以上の静止」は小欠点となることが通達されました。
2012年ロンドンオリンピック、個人総合のゆか。後方3/2~前方5/2(C+E)の着地で手を突いてしまいます。それでも15点台という得点が問題視されたか、2013年のルール改訂では「着地で転倒する」という1.0の減点項目に「または片手、両手でゆかを支える」が付け加えられました。
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同大会、団体決勝のあん馬では終末技に失敗し、日本チームは問合せの末に団体銀メダルを確保するという事態も発生しています。この件については旧ブログで記事にしていますので参照してみてください。あん馬の終末技については、2013年版採点規則の2013年2月版で「終末技のやり直し」が可能になりました。
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2015年世界選手権・グラスゴー大会、予選のゆかではトーマス(後ろとび3/2ひねり前方かかえ込み宙返り転)(D)で頭をゆかに強打、脳震盪状態になっています。動画では分かりにくいですが…。2017年のルール改訂で宙返り転技は全て削除されました。
同じく予選の平行棒ではマクーツの中間局面で停滞しB難度判定を受けています。このあたりの根拠は不明でしたが、2016年2月のNewsletter #30で、2秒以上の停止は不認定になること、3/4ヒーリーはB難度で判定されることが通達されました。
同大会、個人総合の鉄棒ではコールマン(F)がバーに近づき、掴みはしましたが車輪に持ち込めずけ上がりでの処理になってしまいます。2017年のルール改訂では「宙返りを伴いバーを越える手放し技で車輪技に続かない」場合は中欠点となりました。
これらのルール改訂が全て内村の演技が契機かどうかは分かりません。また、内村潰しのルール改訂が行われているなどと主張する気もありません。いずれもまっとうな改訂ばかりです。確かなのはこれほどまでに世界王者は注目されているということ。無名の選手がコバチで振り上がれなくてもルールが変わることはないでしょう。
報道によれば内村はオーストラリア合宿などを経て、まだ本調子ではなさそうですが準備を進めているようです。2020年最初の試合は3月に開催される自らの冠大会、内村航平カップ。万全の態勢で臨んでくれることを祈ってやみません。
この記事へのコメント
ロン
Ka.Ki.