Originators : Morisue
今回の本家本元は意外にもまだやってなかったモリスエ(後方棒上かかえ込み2回宙返り腕支持)です。

発表者はもちろん森末慎二。1984年ロサンゼルスオリンピックで発表したとされています(1)。棒上で2回宙返りをして腕支持で受けるという技の構造についても説明の必要はないでしょう。当時の平行棒では他に類を見ない驚異的な技だったであろうことも想像に難くありません。
1985年のルール改訂でD難度、1993年のルール改訂でE難度と長きにわたり最高難度の技であり続けました。2001年のルール改訂でD難度になり、現在に至っています。
また、1987年発表のベーレ(懸垂前振り後方かかえ込み2回宙返り腕支持)、1998年発表のドミトリエンコ(前振り上がり後方かかえ込み2回宙返り腕支持)といった後方2回宙返り系の技への展開を見せたという点でも重要な技と言えます。
これら2回宙返り系の技は2006-2008年ルールの時代に隆盛を極めましたが、2009年以降は同種類の宙返り技の制限、ベーレの格下げ、そして何より減点項目の多さにより徐々に使い手が少なくなっていきます。現在もこれらの技を構成に入れて活躍している選手としては尤浩(中国)が挙げられるでしょうか。
なお、尤浩も使っている屈身モリスエですが、こちらはファン・リーピンの名が付いています。黄力平(中国)が1994年に発表しており、2012年の通達で名前が付けられました。
参考文献
(1) 木下紘ー郎:平行棒における「前振り上がり後方かかえ込み2回宙返り腕支持(ドミトリェンコ)」の技術に関する研究, 順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 (2008)
この記事へのコメント
toolucky
「後方二回宙返り腕支持系の技」は見ていてダイナミックで、これぞ平行棒の技!という感じで好きなのですが、本当に最近実施している選手は少なくなっていますね。
「減点項目が多い」とのことですが、恐れ入りますが具体的にどのような内容か、ご教示いただけませんでしょうか?
joshiki
10年以上前になると思いますが、モリスエの誕生秘話をテレビでやっていたのを思い出します。当時は「こんな技が認められるのか」という話があったようです。
最近は減点の的にされていますね。腕支持の際にバーの高さで体が地面と平行になるようにというところが、特に減点を受けやすいのでしょうか。リシャオペンやキンテロを使う選手は今後もまず現れなそうですね。
Ka.Ki.
いつもご覧いただきありがとうございます。
減点項目については説明不足でしたね、失礼しました。『男子体操競技情報』をそのまま引用しますが、「宙返り技の受ける際の体の開きは、バーの高さで水平位を基準とする。モリスエやベーレは浮きの表現とともに、腕支持になる前に身体や膝をよく伸ばさなければならない。身体の伸ばしが不充分なものや、膝をまげたまま腕支持になるものは実施減点の対象となる。回転の途中でぶつかるように腕支持になる減点(0.30、0.50)。かかえ込んだまま腕支持になった場合の減点(0.30)。モリスエやベーレの高さ不足の減点(0.10、0.30)。モリスエやベーレでバーを持った瞬間の姿勢不良の減点(0.10、0.30)。」や「ベーレや宙返り系の技の終末局面において、バーを正確に握らない、または遅い握り、上腕部のみで支持しながら前振りになるような捌きに対する減点(0.30)。」といった通達がなされており、他の技と比べても減点項目の多い技であると言えると思います。
Ka.Ki.
動画がなかったんですよね。
最近は流行技である例えばマクーツやバブサーといった技にも厳しくチェックが入っていますが、2009-2012年ルールの頃などはまさに狙い撃ちされているような印象でした。
リ・シャオペンは一時期、鄧書弟選手が使っていましたが、身体を完全に伸ばすのは難しそうな感じでしたね。キンテロについては言わずもがなですね。もっとこれらの技も見たいのですが。
kou
屈身ベーレに関しては、一回目の宙返りの時に膝が曲がったままといった捌きも減点されますし、余計見られなくなりましたね。その中でも最近インスタに上げられた天野選手の屈身ベーレが秀逸な捌きだと感じました!
勝手ながらリンクを貼らせていただきます🙇♂️
https://www.instagram.com/p/B5V5-G6h8yx/
toolucky
詳しく説明していただき恐れ入ります。
姿勢や腕支持の受け方だけでなく受けた後の捌き方まで、多くの細かい減点項目があるのですね。驚きました。
ありがとうございます。
Ka.Ki.
天野選手のこの屈身ベーレは見事ですね。