ユル・モルダウアー - 2019年ウィンターカップ:個人総合の演技

MOLDAUER Yul (USA)
2019 Winter Cup Challenge Las Vegas, NV AA


本格的なシーズンの幕開けを告げる恒例のウィンターカップ。これまで個人総合は2日間の合計で競われていましたが、今年は1日目が個人総合、2日目が種目別(種目別の順位は2日間の合計)として行われたようです。個人総合はユル・モルダウアーが2年ぶりの優勝を果たしています。

#1 ゆか FX


1.前方伸身宙返り5/2ひねりFront Lay 5/2EII
2.後方伸身宙返り7/2ひねりBack Lay 7/2EIII
3.~前方伸身宙返りひねり+ Front Lay 1/2BII(CV:0.1)
4.後方伸身宙返り5/2ひねりBack Lay 5/2DIII
5.~前方伸身宙返り3/2ひねり+ Front Lay 3/2CII(CV:0.1)
6.後ろとびひねり前方かかえ込み2回宙返りひねりArabian Double 1/2DIII
7.シュピンデル・ゴゴラーゼ1/1 Spindle to GogoladzeDI
8.ゴゴラーゼGogoladzeCI
9.後方伸身宙返り2回ひねりBack Lay 2/1CIII
10.後方伸身宙返り3回ひねりBack Lay 3/1DIII

D:5.9
E:7.750
Pen:0.1
Score:13.550

ひねり系の組合せを変えてDスコアを上げている。しかし新たに取り入れた後方7/2~前方1/2でラインオーバー。最後の3回ひねりも低くなって手を突いてしまった。着地が持ち味の選手がまさかのミス。


#2 あん馬 PH


1.ミクラックMikulakDI
2.正交差横移動ひねり逆交差入れFront Double Scissor Travel SdwCI
3.横向き旋回1回ひねりFlair 1/1 SpindleDII
4.正面横移動連続(あん部馬背着手)Front Travel 3/3 Hands btw PCIII
5.Dフロップ3 FlopsDII
6.Dコンバイン2 Flops + R180DII
7.マジャールMagyarDIII
8.シバドSivadoDIII
9.一把手上縦向き旋回Pommel LoopBII
10.一把手上縦向き旋回倒立3/3移動下りP Loop to Hdst Travel 3/3DIV

D:5.6
E:8.500
Score:14.100

2018年は開脚の縦向き移動で難度を上げていたが、今回は閉脚にしている。一方、グループIでミクラックを取り入れており、Dスコアは昨年と同じ5.6をキープしている。なお、2日目の種目別では、縦向き移動を開脚にしてDスコア5.8を出したが、落下を伴っている。


#3 つり輪 SR


1.後ろ振り上がり中水平支持Back Uprise to MalteseEIII
2.アザリアンBack Roll to CrossDII
3.中水平支持MalteseDII
4.ヤマワキYamawakiCI
5.屈身ヤマワキYamawaki PkDI
6.ホンマ十字懸垂Whippet to CrossDIII
7.後ろ振り上がり開脚上水平支持Back Uprise to Strd PlancheCIII
8.ほん転逆上がり倒立Felge to HdstCI
9.後方車輪倒立経過Back Giant thru HdstBI
10.後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり下りDouble Back 2/1EIV

D:5.7
E:8.800
Score:14.500

つり輪はこれまでと同じ構成。着地をわずかに跳ねる程度に収め高いEスコアを出す。


#4 跳馬 VT


DEPenScore
ドリッグスKasamatsu Lay 3/25.29.25014.450

跳馬もドリッグスで変わっていない。前に両足で1歩跳ねるが、相変わらずの姿勢の良い跳越を見せる。


#5 平行棒 PB


1.伸腕屈身力倒立Pike Press to HdstBI
2.ヒーリーHealyDI
3.棒下宙返り倒立Basket to HdstDIII
4.棒下宙返りひねり倒立Basket 1/2 to HdstEIII
5.ディアミドフDiamidovCI
6.車輪ディアミドフGiant DiamidovDIII
7.後方車輪倒立Back Giant to HdstCIII
8.フォキンGiant Back Toss Lay 1/2EIII
9.ハラダFront Uprise Back Toss 1/2DII
10.前方かかえ込み2回宙返りひねり下りDouble Front 1/2FIV

D:6.0
E:8.450
Score:14.450

最初に入れていた開脚前宙(D)をやめて、替わりにヒーリーを入れている。かなり久々にフォキンを使ってDスコアは6.0とした。着地を止める。


#6 鉄棒 HB


1.ヤマワキYamawakiDII
2.エンドーEndoBIII
3.ツォウ・リミンZou LiminCI
4.アドラー1回ひねり片逆手Jam 1/1 to MGDIII
5.アドラーひねりJam 1/2DIII
6.コバチKovacsDII
7.後方片手車輪1 Arm Back GiantBI
8.後方とび車輪1回ひねりHop 1/1CI
9.後方とび車輪3/2ひねりHop 3/2 to MGCI
10.フェドルチェンコDouble Back Lay 3/1FIV

D:5.5
E:7.950
Score:13.450

基本的にはこれまでと同じ構成だが、2018年は抜くことも多かったアドラー1回ひねりを久々に入れてきた。最後はこれも久々のフェドルチェンコ。着地をほぼ収める。

Total Score:84.500 (Total D:33.9)
Rank:1st



モルダウアーが2017年以来2年ぶりの優勝。ミスがなかったわけではありませんが、サミュエル・ミクラックに複数の種目で大きなミスが出たため、0.050という僅差で優勝を勝ち取りました。

各種目のDスコアはこれまでにも出したことがある数字でしたが、6種目としてはフル構成を多く揃え、合計Dスコアの33.9は過去最高と思われます。もちろん世界のオールラウンダーの中では高い水準ではありませんが、元々高い実施を持つ選手だけに、構成を固め、安定感を高めていけば面白い存在になってくると思います。

この記事へのコメント

  • 伸身ローチェ

     減点が少ない選手というイメージが強いので床での着手は意外でしたがあん馬から平行棒のEスコアはさすがですね。しかし驚いたのは鉄棒の降り技でフィドルチェンコをほぼ完ぺきに決めたことです。演技構成に入れるだけでもすごいと感じてしまう技なのでたまげました。
     ところでモルダウアー選手も行っている床のアラビアンダブル半ひねりですが、ひねりのタイミングが違うだけのツカハラではなくこちらをやる選手は未だ多いですね。昔のルールではアラビアン宙返りに高い難度が認定されていたので他の捌きより難しいのかなと思ったのですが愛用する選手は減っていない印象です。
     また二回宙返りの始めと最後に半分ずつひねるので「これは古のハーフインハーフアウトなのでは」と思ったりしましたが、いろいろ動画を見てもやはり「アラビアンダブル半ひねり」は「アラビアンダブル半ひねり」ですね、見方によっては「ハーフインハーフアウト」、「フルイン」、「フルアウト」に次ぐ4つ目のツカハラなのかも。
    2019年02月22日 00:23
  • Ka.Ki.

    アラビアンダブルは屈身が実質の格下げ扱いになったのでほぼ見られなくなりましたが、かかえ込みの出現数はそれほど変わらない印象です。また、アラビアンダブルひねりは元々使い手は多くなかったと思います。

    2017年のルール改訂で後方系と同じ扱いになってしまったアラビアンダブルですが、技の構造を考える上では、明確な前方宙返りの局面を持つべき技として、後方系とは区別して理解しておいた方がいいと思います。
    2019年02月22日 21:27