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内村航平が、2019年は跳馬で「リ・シャオペンよりひねりが半分少ない技」を使う予定だと報じられています。いったいどんな技なのか確認しておきましょう。
リ・シャオペンは内村が2015年から演技に取り入れ、2016年リオデジャネイロオリンピックでは悲願の団体優勝や個人総合2連覇の偉業に大きな役割を果たした跳越です。このリ・シャオペンに至るまでの道のりは旧サイトでも記事にしました。その課題表記は「ロンダートひねり前転とび前方伸身宙返り5/2ひねり」という長いもので、動きとしてはロンダートから入るため後ろ向きに跳躍板を踏み切り、1/2ひねって跳馬には前向きに着手、突き放して前方伸身宙返りをする間に5/2(2回半)ひねって着地する非常に複雑な技です。Dスコアは5.8で、現在跳馬で認められている技としてはヤン・ハクソンやリ・セグァンの6.0に次ぐ高難度の技となっています。

内村は2017年世界選手権でもリ・シャオペンを使いましたが、着地で左足首を負傷。その後の演技を棄権することになります。2018年も世界選手権の直前に跳馬の練習で今度は右足首を負傷。本番までに驚異の回復力を見せますが、6種目を演技することは叶いませんでした。2020年東京オリンピックを控えた今年、絶対に怪我をしないこと、そして東京オリンピックでは再びリ・シャオペンを跳ぶ、この2つを実現させるために選んだ跳越が「リ・シャオペンよりひねりが半分少ない技」ということになります。
その跳越はひねりが半分少ないため「ロンダートひねり前転とび前方伸身宙返り2回ひねり」となります。Dスコアはリ・シャオペンより0.4低い5.4。これまでこの跳越を使った選手は多くありませんが、実施例をいくつか見ていきましょう。

ゆかと跳馬のスペシャリスト、ティエゴ・イポリト(ブラジル)はこの跳越を得意にしていた選手の一人です。
マリアン・ドラグレスク(ルーマニア)もロンダートひねり系の跳越としてリ・シャオペンを使っていた選手。2017年あたりからこの2回ひねりを使うようになりました。
ドミニク・カニンガム(イギリス)は2018年からこの跳越とシライ/キム・ヒフン、2本のロンダート入りの跳越を使って活躍を見せています。
リ・シャオペンの着地は後ろ向きになりますが、この2回ひねりの着地は前向きになります。前向き着地の方が足首への負担は少ないといい、このあたりが怪我の防止ということにつながるのでしょう。内村が以前から使っているシューフェルトも前向き着地ですが、Dスコア5.2のシューフェルトよりも0.2高いDスコアを得ることもできます。
内村がこの跳越を選ぶとは想像だにしていませんでしたが、理由を知れば知るほど今これほど適切な跳越はないように思えてきます。こういった頭脳的なアプローチは実に内村らしく、まさにキングの真骨頂と言えるでしょう。試合で見せてくれるのが楽しみです。
この記事へのコメント
ひろ
この技、最近の実施で強く印象に残っている選手といえばバイルズ選手ではないでしょうか。
キングとクイーンが同じ跳躍を実施するというのも偶然でないなにかを感じます。互いに東京五輪でたどり着く跳躍技はリシャオペンになりそうな予感がしますね。
こっこ
長くて呼びにくいですよね。なにか通称や技名は付かないのでしょうか。
そもそも「前転とび前方伸身宙返り2回ひねり」に名前がないというのもありますが、、、
Ka.Ki.
いつもご覧いただきありがとうございます。
女子でリ・シャオペンまではさすがにないだろうという気がしますが、バイルズ選手だとそうも言いきれない感がありますね。
Ka.Ki.
名前ないんですよね。リ・シャオペンが先に発表されたために難度表に登場した技のはずです。
ナダル
ロンダート入りでないものはドリッグスが最初に発表したと聞いたことがありますが、探すのも一苦労しそうですね。
S&G
この技の特集を取り上げていただけてうれしいです。
ひそかに期待してお待ちしていました。
この技を選択する理由が、なんとも内村選手らしくワクワクさせてくれて、
さらに春の大会がより一層楽しみになりそうです。
Ka.Ki.
前転とび前方伸身2回宙返りはそのようですね。『研究部報』で2001年とありましたので、こちらもヨー2の方が先だったということになりますね。
ロンダート入りの方は、誰が最初だったか確認するのが確かに難しそうです。
Ka.Ki.
ご期待にお応えできたのであればとても嬉しいです。試合が楽しみですね。
ユーマォ
しかし、脚への負担もさることながら、演技でいうと減点されやすい技だと思うので、戦略として、どうなのかな?とも思います。
もちろん、内村なので、その上で完璧な演技をしてくれると期待はしています。