FIG Newsletter #34
FIGのNewsletter #34が発行されましたので、ここで内容をまとめておきたいと思います。なお「⇒」以降は私のコメント(戯言)です。
解釈に間違いがあるかもしれません。競技関係者の方は原本を直接確認するか、日本体操協会の公式な情報をお待ちください。
一般条項 General
● 演技開始、または終了時にD1審判に合図・礼をしない:D1審判によって決定点から各々0.30減点
⇒ニュースレターでは「リマインダ」となっています。8月のジャカルタ・アジア競技大会:種目別跳馬におけるキム・ハンソル(韓国)への判定についてと考えていいでしょう。
● 9-2条 7.「腕または脚、体のまがりなどの実施減点」に関する減点の明確化
・小欠点 | わずかにまがる | 45°まで |
・中欠点 | 明らかにまがる | 45°を超え90°まで |
・大欠点 | 極端にまがる | 90°を超える |
ゆか FX
● 組合せの2つ目の技の着地が不安定で大欠点を伴った場合、組合せ加点は与えられない。
⇒特に新しい事項ではありません。
● 屈身デフェル:すでに難度表に記載されている(II-58、D難度)
⇒デフェルの表記は「前とびひねり後方かかえ込み(屈身)2回宙返り」です。
あん馬 PH
● 移動技から下向き転向技につなげることで難度を上げることはできない。
例:トン・フェイ~下向き転向下り→D+A
⇒ちょっと訳に悩むところですが、例を見るに下向きの転向移動技にさらに下向き転向技を付け加えたりしても、個々の技の難度しか得られないということだと思います。
● ショーン、ベズゴは両ポメル上支持から360°転向し、両ポメル上正面支持で終了する。両ポメルを支持して技を終えなければ難度は認定されない。
⇒かつて鹿島丈博が馬端でショーンを実施していましたが、そのような実施は認められないことになります。
● 開脚マジャール、開脚シバドは、開脚旋回で移動を完了しなければならず、早く脚を閉じてはならない。移動を完了する前に脚を閉じた場合はD難度となる。開脚旋回で実施することによって難度を上げることができる移動技はマジャールとシバドに限られる。
⇒脚を閉じるのが早い実施が散見され気になっていたところで早速通達が出ました。また、開脚ドリッグスがF難度になったりしないということも明確になりました。
● 交差倒立の前後に技を付け加えても難度を上げることはできない。D難度を超える難度は旋回技にのみ与えられる。
例:正交差倒立(リ・ニン)の前にとびを加えても難度を上げることはできない。
⇒ゆかのグループIと同じ考え方になります。
● グループIIとIIIの技についての明確化:倒立から下ろして開脚支持になる技を除き、難度表に記載された技に続けることが要求される。唯一の例外は、半旋回して開脚支持になり片脚振動技や交差技に続けることである。
例:1ポメル上でLLSSを終え、横向き正面支持から半旋回し開脚支持→E+難度なし
● 「交差や片足振動の大きさがない」に関する減点の明確化
肩よりも上 | 減点なし |
肩と水平の間 | 小欠点 |
水平より下 | 中欠点 |
● 縦向き支持または横向き支持から始まる両ポメルを挟んだすべての移動を伴うまたは伴わない1回ひねり(1/1シュピンデル)技はII-30「両把手を挟んで(開脚)旋回1回ひねり(ケイハ)」と同一枠とする。
平行棒 PB
● 前振り上がり~脚前挙支持で振り上がりの大きさが不足している場合、0.1または0.3の減点
鉄棒 HB
● シュタルダーの後、握りが横にずれて1/2ひねりをした場合、1/2ひねりは分割され、シュタルダーとしてB難度となる。
⇒シュタルダーひねり大逆手でC難度を取ろうとする場合は正確に実施しなければなりません。
● 後方とび車輪1回ひねり(クースト)は明確なとび局面を見せなくてはならない。明確なとび局面が見られない場合は難度は認定されない。
● 15-3条「鉄棒特有の減点」の訂正
訂正前:エンドー、シュタルダーの開始局面における倒立からの角度逸脱
訂正後:エンドー、ワイラー、シュタルダーの開始局面における倒立からの角度逸脱
⇒Code of Points 2018年1月版で新たに加わった減点項目です。
新たに名前が付いた技が4技掲載されています。
ゆか FX
リエク 発表者:RIEK Jack (AUS)
・前転開脚浮腰支持経過十字倒立
・C難度(グループI)
・2018年パシフィックリム選手権・メデジン大会で発表
2017年世界選手権・モントリオール大会でセヴェリン・クランツレミュラー(オーストリア)が新技申請し、実施できなかった技です。動画は確認できていません。
あん馬 PH
ケイハ3 発表者:KEIKHA Saeedreza (IRI)
・両把手を挟んで上向き転向(シュテクリA)
・D難度(グループII)
・2018年ワールドカップ・バクー大会で発表
ケイハ4 発表者:KEIKHA Saeedreza (IRI)
・両把手を越えて縦向き後ろ移動ひねり(5-1)
・E難度(グループIII)
・2018年ワールドカップ・バクー大会で発表
こちらの記事で演技を紹介したとおり、2つの新技がケイハ3、ケイハ4になりました。ケイハ4の図の上段部分は必要なのかよく分かりませんが…。
ケイハ5 発表者:KEIKHA Saeedreza (IRI)
・馬端外向き縦向き支持から両把手を越えて縦向き旋回1回ひねり(2回以内の旋回で)
・F難度(II-30「ケイハ」と同一枠)
・2018年ワールドチャレンジカップ・メルスィン大会で発表
こんな技を発表していたとはまったくノーマークでした。ケイハ4は1/1シュピンデルの前段階だったようです。しかし、1/2シュピンデルのケイハ4がE難度であるのに対して、この技はF難度。さらには上述の通達のとおりケイハと同一枠の扱いということであまり使い勝手のいい技とは言えなさそうです。動画は確認できていません。
また2つの技に遡って名前が付けられています。
ゆか FX
ゴンサレス 発表者:GONZALEZ SEPULVEDA Enrique Tomas (CHI)
・後方伸身宙返り7/2ひねり
・E難度(III-23)
・2003年世界選手権・アナハイム大会で発表
後方7/2をゴンサレスが発表したことはよく知られていましたが、晴れて名前が付きました。チリの選手の名前が付く技は初めてになります。
跳馬 VT
ヤン・ウェイ 発表者:YANG Wei (CHN)
・屈身メリサニディス
・D:5.6(III-86)
・2002年世界選手権・デブレツェン大会で発表
屈身メリサニディスにもヤン・ウェイの名が付きました。通達では世界選手権で発表となっていますが、直前のプサン・アジア競技大会でも実施していました。
この記事へのコメント
伸身ローチェ
まずデフェルなんですが「ひねりのタイミングが早いと難度が下がるなんて2016年までのルールと逆だなあ」と前から思っていましたが、屈伸だと2段階も下がってしまうんですね。選手からすれば禁止技になったのと同じようなものなんでしょうか。
次に
>シュタルダーひねり大逆手でC難度を取ろうとする場合は正確に実施しなければなりません。
これなんですが、そもそもとび局面のない半ひねりでは握りは横にずれると思うのですが、正確な実施はどのようにするべきなんでしょうか。
ケイハ選手の名の付く技は5つにまでなりましたか、1種目での数としては最多ですね。そこで構成に5つの「ケイハ」が並ぶことはできるのかと思いましたが、「無印」と「5」は同枠なんですね、D難度のシュピンデルには縦向きのマジャールと1つポメルを挟んだ横向きのものが別枠なので、この同枠にした判断は微妙なところだったのかなと感じました。
Ka.Ki.
内容から判断してシュタルダーひねり大逆手の軸手のことと解しました。軸手をずらさず大逆手になるのが正しい実施という理解です。もちろん私の解釈なので間違っているかもしれません。
ケイハとケイハ5を比べると、ともに、両ポメルを挟んで横向き支持になる局面(ケイハは正面支持で、ケイハ5は背面支持で)と、馬端で縦向き支持になる局面(ケイハは馬端中向きで、ケイハ5は馬端外向きで)があり、課題性が共通していると判断されたのかもしれません。ケイハ5の実施を見ていないので何とも言えませんが。
伸身ローチェ
ところでもっとショックな記述がありました。
>D難度を超える難度は旋回技にのみ与えられる。
これはいわゆる「床のグループⅠの技の難度はD難度を超えて認定されない」と同じような取り決めですね。
まず交差技が「あん馬のメインの技になるべきではない」というように受け取ることができる内容に驚きました。もっと言えば「あん馬の演技の評価は旋回技によって主に決まるべきだ」と
床のグループⅠの技は旋回技はあん馬で、力技は吊り輪でも評価されるので床で重きを置く必要はないという理屈は納得できます。平行棒でも鉄棒でもできるような技が削除されたことがあったと思います。しかし交差技はあん馬でしかできません。
また交差技ではすでにセア倒立、ブライアン、ミクラックなどのD難度技があり、これ以上の新技が望めるようにはあまり思えません。実質、公式に交差技の発展を禁止されたようで寂しい思いがあります。
何の考えもなく作るような規定ではないともちろんわかっているので、その意図が気になっているところです。
Ka.Ki.