2018年世界選手権代表選考の行方は

2018 JPN Team Selection


2018年の世界選手権は10~11月にかけてカタールのドーハで開催されます。2017年の世界選手権では団体戦はありませんでしたが、今年は団体、個人総合、種目別と全ての競技が行われます。団体決勝では上位3チームが早くも2020年東京オリンピックの団体出場資格を得られるなど、重要な位置付けの大会となっています。

2018年世界選手権・ドーハ大会の日本代表枠は5人。そのうち2人は5月のNHK杯で優勝した内村航平と2位の白井健三に決定しており、残りの3人は間近に迫った全日本種目別選手権の結果を受けて選出されます。今回は、今年の代表選考の方法をおさらいし、現時点での状況を確認しておきたいと思います。



代表選考の方法は体操NIPPONオフィシャルファンサイトに分かりやすくまとめられています。こちらのページによれば、3人目と4人目の代表は、

NHK杯12位以内である選手から、既に決定した2名との組み合わせでチーム得点が高得点となる選手が2名選出されます。また、その内1人はNHK杯5位以内の選手でなければなりません。

となっており、最後の1枠となる5人目の代表は、

チーム得点に貢献できる選手を確認し、種目別決勝でもメダル獲得が期待できる選手を選ぶのが最後の1枠です。

となっています。

そしてチーム得点についてですが、すでに代表が決定している内村と白井については、

全日本個人予選、全日本個人決勝、NHK杯の3試合のうち、各種目高得点上位2つの試合の得点平均

を得点とし、これから選出される3人については、上記3試合と全日本種目別予選、全日本種目別決勝の

5試合のうち、各種目高得点3試合の得点平均

を得点として5-3-3制によるチーム得点を算出することになります。



この条件をもとに、現時点での状況を確認しておきたいと思います。まず、ベースとなる内村、白井の得点ですが、3試合のうち各種目上位2試合の平均なので、以下のようになるはずです。一番左列の数字はNHK杯順位です(以下、同じ)。

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1内村航平14.59914.25014.13314.46614.60014.849
2白井健三15.43313.60013.54915.00014.56614.049

なお、上記のページには「白井健三選手はW杯東京の得点も加味される」とありますが、これは全日本個人予選の得点がワールドカップ・東京大会より低かった場合の救済措置という性質のものであったようです。予選終了後には日本体操協会が以下のようにツイートしており、白井のワールドカップ・東京大会の得点は今回の選考には関与しないものとします。


残り3人の選考に用いられる得点は、5試合のうち各種目上位3試合の平均です。全日本種目別を控えた時点では不確定要素が多すぎますが、あくまでも現時点での状況ということでここまでの3試合の単純平均を使い、チーム得点を算出してみます。

まずは対象となる選手の得点です。残り3人の代表のうち2人はNHK杯5位以内と12位以内の選手から選出されます。NHK杯3位から12位までの10人の選手とその平均得点は以下のとおりとなります。

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3萱和磨13.97714.66614.13214.10014.88813.733
4谷川翔14.39914.38814.02114.36614.98813.144
5谷川航14.52213.89914.04414.64414.91113.055
6千葉健太14.24414.37713.85513.97714.96613.466
7田中佑典14.04413.46614.05513.37715.12114.533
8野々村笙吾13.81013.81014.47713.97714.91013.544
9田浦誠也13.94413.82113.43314.41014.59913.966
10前野風哉13.45513.75514.22214.09914.09913.955
11神本雄也14.08812.93314.28813.36614.94413.711
12荒屋敷響貴14.27714.55513.49913.78813.69913.133

1人は必ずNHK杯5位以内のため、この10人から2人を選ぶ組合せは24通り。そのすべての組合せでチーム得点を算出したところ、トップ3は以下の組合せになりました。

1st
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1内村航平14.59914.25014.13314.46614.60014.849
2白井健三15.43315.00014.049
3萱和磨14.66614.13214.88813.733
4谷川翔14.39914.38814.02114.36614.988
Total44.43143.30442.28643.83244.47642.631260.960

2nd
FXPHSRVTPBHB
1内村航平14.59914.25014.13314.46614.60014.849
2白井健三15.43313.60015.00014.049
4谷川翔14.39914.38814.02114.36614.988
7田中佑典14.05515.12114.533
Total44.43142.23842.20943.83244.70943.431260.850-0.110

3rd
FXPHSRVTPBHB
1内村航平14.59914.25014.13314.46614.60014.849
2白井健三15.43315.00014.049
3萱和磨14.66614.13214.88813.733
5谷川航14.52213.89914.04414.64414.911
Total44.55442.81542.30944.11044.39942.631260.818-0.032

というわけで現時点ではいたって順当にNHK杯3位の萱和磨と4位の谷川翔が優位に立っています。注目すべきはそれに次ぐ谷川翔と田中佑典という組合せ。田中はNHK杯こそ7位ですが、得意のつり輪、平行棒、鉄棒で3試合通じて大きなミスがなくチーム得点への貢献度が高くなっていることが分かります。一方、これまで大きなミスがなかったということは、全日本種目別において平均得点を上昇させることが容易ではない、ということでもあります。

萱はチームに貢献できるあん馬、つり輪、平行棒の3種目で全日本種目別にエントリーしており、少しでも平均得点を上昇させたいところです。すでにかなり優位な位置に付けている谷川翔は、6種目全てにエントリーしており、NHK杯のあん馬や鉄棒ではミスがでているため、平均得点のさらなる上昇が期待できます。初代表の座をすぐそこまで引き寄せていると言っていいでしょう。



5人目の代表については、現時点で予想するのは難しいと言わざるを得ません。どうしても仮定の仮定のような話になってしまいますが、仮に上記の第1位の組合せどおり、内村、白井、萱、谷川翔の4人が確定したとします。この場合、チーム得点が最も高くなるのは以下の選手になります。

1st
FXPHSRVTPBHB
1内村航平14.59914.25014.13314.46614.849
2白井健三15.43315.00014.049
3萱和磨14.66614.13214.888
4谷川翔14.39914.38814.36614.988
7田中佑典14.05515.12114.533
Total44.43143.30442.32043.83244.99743.431262.315

2nd
FXPHSRVTPBHB
1内村航平14.59914.25014.13314.46614.849
2白井健三15.43315.00014.049
3萱和磨14.66614.13214.88813.733
4谷川翔14.39914.38814.36614.988
8野々村笙吾14.47714.910
Total44.43143.30442.74243.83244.78642.631261.726-0.589

3rd
FXPHSRVTPBHB
1内村航平14.59914.25014.13314.46614.849
2白井健三15.43315.00014.049
3萱和磨14.66614.13214.88813.733
4谷川翔14.38814.988
5谷川航14.52214.04414.64414.911
Total44.55443.30442.30944.11044.78742.631261.695-0.031

このようにチーム得点のみを考えた場合はスペシャリストが入る余地はほぼなくなってきます。しかし、最後の1枠についてはチーム得点もさることながら、種目別決勝でも世界と戦える選手を選ぶというのが今回の選考方法。オリンピック出場がかかる重要な団体戦と、種目別の表彰台、難しい判断を要求される5人目の選考に大いに注目が集まります。


チェックは十分にしたつもりですが、間違いがあったらすいません。 また、代表選考の方法については、解釈に間違いがないとも限りませんし、このようなプロセスで選考されるのかどうかも分かりません。あらかじめご了承ください。

この記事へのコメント

  • jack

    いつも深い考察の入った記事をありがとうございます。

    特に今回の選考方法は複雑になっており、ホームページだけではしっかりと理解できていなかったので実際の得点を交えてのこうした考察はたいへんありがたく思っています。

    代表選考において純粋な得点や種目別の可能性を考慮するのはもちろんですが、内村選手の体力のことも心配です。
    以前のように団体予選、決勝、個人総合+種目別の18演技以上を行うのはさすがに厳しいのではと思っていて、平行棒だけでなくつり輪といった疲れる種目も休ませることも考えて選考する必要があると考えています。

    先日のチームマネジメントに関する素晴らしい記事からも分かるようにしっかりと選手一人一人のことを考えることができる水鳥さんならもっともっと細かい所も考えて選考されると思いますが😌
    2018年06月29日 13:29
  • こっこ

    大変分かりやすい記事をありがとうございます。

    上位選手は全員が素晴らしいオールラウンダーですので、その中でいかに自分の得意種目の点を伸ばしていけるか。という勝負になりそうですね。

    土日の種目別がますます楽しみです。
    2018年06月29日 15:24
  • Ka.Ki.

    >jackさん
    今回の仮定では誰が入っても内村選手が平行棒で休めることになりますが、スペシャリストが選出された場合はその限りではないかもしれません。得点だけでなく、このような選手の起用についても考えていくと本当に悩ましい選考になりそうです。
    2018年06月29日 22:39
  • Ka.Ki.

    >こっこさん
    5試合の得点が選考に関わってくるので本当に最後まで分かりませんね。楽しみです。
    2018年06月29日 23:10