谷川翔 - 2018年全日本選手権:個人総合の演技

TANIGAWA Kakeru (JPN)
2018 JPN Nationals AA


2018年の全日本選手権を制したのは内村航平でも白井健三でもありませんでした。予選2位に付けていた順天堂大学2年生の谷川翔が史上最年少での優勝を飾っています。演技構成を確認しておきましょう。

動画はNHKにより一部アップされていますが、埋め込みができないので記事中のリンクを参照してください。

#1 ゆか FX

1.前方屈身2回宙返りひねりDouble Front Pk 1/2FII
2.前方伸身宙返り1回ひねりFront Lay 1/1CII
3.~前方伸身宙返り5/2ひねり+ Front Lay 5/2EII(CV:0.1)
4.後方伸身宙返り3/2ひねりBack Lay 3/2CIII
5.~前方伸身宙返り3/2ひねり+ Front Lay 3/2CII
6.ゴゴラーゼGogoladzeCI
7.マンナMannaCI
8.後方伸身宙返り2回ひねりBack Lay 2/1CIII
9.後方伸身宙返り5/2ひねりBack Lay 5/2DIII
~前方伸身宙返りひねり+ Front Lay 1/2BII(CV:0.1)
10.後方伸身宙返り3回ひねりBack Lay 3/1DIII

D:5.9
E:8.600
Score:14.500

F難度の前方屈身ダブルひねりから入るが、全体としてはひねり技中心の構成。着地が動いた場面もあったが、空中姿勢の良さでEスコアを伸ばした。


#2 あん馬 PH

1.逆交差倒立Back Scissor to HdstDI
2.ベルキFlair 1/1 Spindle on PommelsEII
3.Dフロップ3 FlopsDII
4.ブスナリBusnariFII
5.横向き旋回1回ひねりFlair 1/1 SpindleDII
6.1回の旋回で正面横移動Front Hop Travel 3/3CIII
7.マジャールMagyarDIII
8.シバドSivadoDIII
9.一把手上縦向き旋回Pommel LoopBII
10.下向き逆移動倒立450°ひねり3/3移動下りBack Stockli to Hdst Travel 3/3 450EIV

D:6.1
E:8.600
Score:14.700

動画はこちらから。E難度のベルキ(両把手上横向き旋回1回ひねり)を見せる。その後もブスナリを入れるなど高難度の技を続けた。腰の高い開脚旋回であん馬でも高いEスコアを出す。


#3 つり輪 SR

1.後ろ振り上がり中水平支持Back Uprise to MalteseEIII
2.中水平支持MalteseDII
3.け上がり脚前挙支持Kip to L-SitBIII
4.屈身ヤマワキYamawaki PkDI
5.ヤマワキYamawakiCI
6.後ろ振り上がり開脚上水平支持Back Uprise to Strd PlancheCIII
7.ほん転逆上がり倒立Felge to HdstCI
8.後ろ振り上がり倒立Back Uprise to HdstCI
9.後方車輪倒立経過Back Giant thru HdstBI
10.後方伸身2回宙返り1回ひねり下りDouble Back Lay 1/1DIV

D:5.3
E:8.766
Score:14.066

テレビ放映では映らなかったが、日本体操協会のレポートによればこの構成。Dスコアは高くはないが、つり輪でも良好な実施を見せた模様。


#4 跳馬 VT

DEPenScore
ドリッグスKasamatsu Lay 3/25.29.23314.433

動画はこちらから。跳馬はドリッグス。着地は少し上体が動くが止める。空中姿勢も良くここでも高いEスコアを出す。


#5 平行棒 PB

1.後ろ振り上がり前方屈身宙返り支持Back Uprise Front Pk to SupDII
2.ヒーリーHealyDI
3.棒下宙返り倒立Basket to HdstDIII
4.後方車輪倒立Back Giant to HdstCIII
5.モイMoyCIII
6.バブサーBhavsarEIII
7.チッペルトTippeltDIII
8.前振りひねり倒立Stutzkehr to HdstCI
9.前方開脚5/4宙返り腕支持5/4 Front StrdDI
10.前方かかえ込み2回宙返りひねり下りDouble Front 1/2FIV

D:6.0
E:8.866
Score:14.866

動画はこちらから。平行棒も終始いい実施を見せる。着地はわずかに跳ねたが、空中姿勢は脚の開きもなく素晴らしい。


#6 鉄棒 HB

1.アドラーJamCIII
2.ポゴレロフPogolerovFII
3.後方浮腰回転後ろ振り出し順手背面懸垂Stoop in to Back TossCIII
4.順手背面車輪Czech GiantDI
5.ケステKosteCIII
6.シュタルダーとび3/2ひねり片大逆手Stalder Hop 3/2 to MGDIII
7.ヤマワキYamawakiDII
8.エンドーEndoBIII
9.後方とび車輪1回ひねりHop 1/1CI
10.後方伸身2回宙返り1回ひねり下りDouble Back Lay 1/1DIV

D:5.6
E:8.300
Score:13.900

動画はこちらから。白井も実施しているアドラーからのポゴレロフを見せる。その後はこのところ順天堂大学勢が取り入れている順手背面車輪を使うが、この谷川翔の実施が最も良く映った。終末技の伸身月面の腰の曲がりは気になるが、着地はわずかな跳ねと手の回しに留める。

Total Score:86.465 (Total D:34.1)
Combined Total:172.496
Rank:1st



学生選手の全日本への出場資格は前年インカレの上位20名。2017年不調だった谷川翔にはその資格がありませんでしたが、3月のトライアウトで資格をもぎ取っての全日本出場でした。しかし谷川翔のトライアウトでのスコアは83.200。1か月半後の大会で2日間とも86点台を揃えて優勝するとは誰が予想したでしょうか。

合計Dスコアは34.1と決勝を同じ組で回った上位6人の中では最も低いながら、正確さ、美しさ、雄大さを兼ね備えた優れた実施でEスコアを伸ばしました。決勝では2種目目のあん馬でトップに立ち、ミスのない演技でそのまま最後まで突っ走りました。今後は実施のレベルを保った上で、難度の向上が求められることになるでしょう。内村と同じ大学2年生で王者となった谷川翔に大いなる期待がかかります。

この記事へのコメント

  • 太一

    本当に大会前には彼が優勝するとは全く予想出来ませんでしたね。

    その基礎技術の正確さは素晴らしく、富田、内村と続いてきた「美しい体操」を体現するエースの継承者となる素質は十分ですね。

    いずれは出てくる逸材のひとりでしたが、東京五輪の2年前のこのタイミングで出来てきたことは、今後の成長を踏まえ理想的だと言えます。

    過去の映像などあさっていると、鉄棒でまだ進化できる要素を持っていることがわかりました。
    大学進学直前の一年前には鉄棒に現在入れていないコールマンを軽々と捌いており、離れ技のバリエーションは持っています。
    その鉄棒はスイングを力で行っているようなので、内村選手のような「ヌキ」を会得すれば数段上のレベルの鉄棒に変貌出来るのではと期待します。

    この勢いのまま世界代表をもぎ取り、活躍していってもらいたいですね。

    一方の内村選手は、試技会では87点台を出したということなので、依然世界トップレベルの実力でを持っていることに疑いはないと思います。
    NHK杯で更に復調した演技を見られることを願っています。
    (現地観戦の予定なので、楽しみにしています。)
    2018年05月01日 19:48
  • Ka.Ki.

    谷川翔選手は空中姿勢の美しさが特に印象的でした。鉄棒については現在はポゴレロフや順手背面で難度を稼いでいるので今後どう展開していくのかは分かりませんが、何をやっても十二分にこなせる、そんな才能を感じました。
    2018年05月02日 22:01
  • ユーマォ

    まずはおめでとうございます。

    今後は床と跳馬のDを上げていく必要はあると思いますが、あん馬と平行棒の平行棒の実施は素晴らしかったと思います。
    2018年05月03日 09:33
  • Ka.Ki.

    どちらかというとつり輪と鉄棒かなという気がします。跳馬はオールラウンダーでもDスコア5.6が普通になってきてはいますが、この完成度のドリッグスなら戦えないこともないと思います。
    2018年05月03日 23:59