2018年白井健三のゆかは

Shirai's FX Routine in 2018


あけましておめでとうございます。2018年はいよいよ世界選手権で団体戦が始まり、その結果は2020年東京オリンピックへとつながっていきます。体操ニッポンの活躍を期待し、まずはこの記事から始めたいと思います。今年もどうぞよろしくお願いします。



昨年、世界選手権の個人総合に初めて出場し、オールラウンダーとしても力を付けつつある白井健三ですが、やはりそのゆかには注目せずにはいられません。2017年はDスコア7.2の演技構成を使い、種目別では負けなしの快進撃を続けましたが、2月のワールドカップから4月の全日本選手権にかけては構成に模索が見られました。おさらいをしておきましょう。


ワールドカップ・メルボルン大会:予選 2017 World Cup Melbourne (AUS) QF


1.シライ3Double Back Lay 3/1HIII
2.リ・ジョンソンDouble Back 3/1GIII
3.前方かかえ込み宙返り1回ひねりFront 1/1BII
4.~シライ2+ Front Lay 3/1FII(CV:0.1)
5.伸膝前転脚前挙支持経過倒立Endo Roll Pk to HdstCI
6.後方伸身宙返り7/2ひねりBack Lay 7/2EIII
7.~前方伸身宙返り2回ひねり+ Front Lay 2/1DII(CV:0.2)
8.後方伸身宙返り5/2ひねりBack Lay 5/2DIII
9.~前方伸身宙返り3/2ひねり+ Front Lay 3/2CII
10.シライ/グエンBack Lay 4/1FIII

D:7.1


ワールドカップ・メルボルン大会:決勝 2017 World Cup Melbourne (AUS) EF


1.シライ3Double Back 3/1 Lay HIII
2.リ・ジョンソンDouble Back 3/1GIII
3.前方かかえ込み宙返り1回ひねりFront 1/1BII
4.~シライ2+ Front 3/1 LayFII(CV:0.1)
5.伸膝前転脚前挙支持経過倒立Endo Roll Pk to HdstCI
6.後方伸身宙返り7/2ひねりBack Lay 7/2EIII
7.~前方伸身宙返り3/2ひねり+ Front Lay 3/2CII
8.後方伸身宙返り5/2ひねりBack Lay 5/2DIII
9.~前方伸身宙返り5/2ひねり+ Front Lay 5/2EII(CV:0.2)
10.シライ/グエンBack 4/1 LayFIII

D:7.2


全日本選手権 以降 Since 2017 JPN Nationals

動画は世界選手権・モントリオール大会:予選

1.シライ3Double Back 3/1 Lay HIII
2.リ・ジョンソンDouble Back 3/1GIII
3.後方伸身宙返り5/2ひねりBack Lay 5/2DIII
4.~前方伸身宙返り5/2ひねり+ Front Lay 5/2EII(CV:0.2)
5.前方かかえ込み宙返り1回ひねりFront 1/1BII
6.~シライ2+ Front 3/1 LayFII(CV:0.1)
7.伸膝前転脚前挙支持経過倒立Endo Roll Pk to HdstCI
8.後方伸身宙返り7/2ひねりBack Lay 7/2EIII
9.~前方伸身宙返り1回ひねり+ Front Lay 1/1CII
10.シライ/グエンBack 4/1 LayFIII

D:7.2


観るものの度肝を抜いた最初のシライ3とリ・ジョンソン、そして終末技のシライ/グエン、グループIの倒立技は共通していますが、ひねり系の連続技とその順番が微妙に変わっています。その部分に着目してみましょう。

メルボルン予選前方1回~シライ2(B+F)後方7/2~前方2回(E+D)後方5/2~前方3/2(D+C)
メルボルン決勝前方1回~シライ2(B+F)後方7/2~前方3/2(E+C)後方5/2~前方5/2(D+E)
全日本以降後方5/2~前方5/2(D+E)前方1回~シライ2(B+F)後方7/2~前方伸身1回(E+C)

Dスコアはメルボルンの予選が7.1、あとは7.2です。組合せ加点はどの構成も0.1と0.2が1箇所ずつで計0.3となっています。メルボルンの予選と決勝では、2つ目の連続技をE+DからE+Cに落とす替わりに、3つ目の連続技をD+CからD+Eに上げ、Dスコアを0.1アップさせています。

さらに全日本以降は、難しい後方5/2~前方5/2のD+Eを前半に実施。後方7/2からの連続が前方伸身1回に変わっていますが、E+Cで難度はそのままです。2017年のルール改訂で、前方1回など一部の宙返り技はかかえ込みと伸身が区別されるようになり、シライ2の前に前方かかえ込み1回を入れながら、このような連続技を実施することが可能になりました。

この変遷を見ると、演技の安定性を高めるため実に頭脳的に構成を検討していたことが分かります。全日本以降は12月の豊田国際まで全てこの構成で演技。全日本種目別や世界選手権の種目別を制し、個人総合で6種目演技するときでもこの構成を通しました。


さて、2018年の白井はどのようなゆかの演技を見せてくれるでしょうか。Dスコア7.2のこの構成はかなり安定しており、またオールラウンダーとしてのレベルアップに取り組む中、ゆかを変えてくることはないかもしれません。しかし、4年前の2014年には前年と同じ構成で世界選手権の種目別を逃したという過去もあります。何より、この選手は常に私たちを驚かせる何かをやってくれる気がしてならないのです。今年も白井健三からは目が離せそうにありません。

この記事へのコメント

  • kou

    いつもブログを楽しく拝見しております。
    白井選手の床は常に進化しているので、来年以降もとても楽しみです。
    いつかの密着取材の番組の時に、「抱え込み新月面半ひねり(F)〜前方伸身2回ひねり(D)」を練習していたので、個人的にはそれが見たいです!
    シライ2のシリーズの代わりに実施すれば、Dスコア7.5…!かなり現実的にはムリのある構成な気もしますが、夢は膨らみますね。
    あとは兼ねてから練習では実施している、後方4回半ひねりに「シライ4」の名前をつけて欲しいです。
    2018年01月05日 12:01
  • こっこ

    あけましておめでとうございます。今年も更新を楽しみにしています。

    白井選手の構成を考えると、後方7/2~前方1/1を前方2/1にするのはあるかもしれないですね、2016年までやっていましたし。
    とはいえ、白井選手ならそんな予想を覆してくれそうですので、期待して待つことにします。笑
    2018年01月05日 17:56
  • tokubay

    あけましておめでとうございます。いつも興味深い記事、ありがとうございます!

    去年の白井の演技構成を見て思ったことは、
    「(リジョンソン系を二ついれると)あの白井の実力をもってしても、後方三回半〜前方二回を前方一回にダウングレードしなければ体力が持たないのか」でした。
    しかし白井の成長速度をみると、さらなる床のDスコアアップを期待せざるを得ないですね!
    後方三回半〜前方二回にもどすとか、後方三回半を四回半にするとか、
    はたまた、抱え込み前方一回〜前方三回を前方三回〜伸身前方一回にするとか(これは、他の選手の練習動画を見て「白井もできるだろう」という身勝手な予想ですが笑)。
    ここまでくると妄想になってしまいますが、リジョンソンのかわりに三回宙返り系を入れてこないだろうかと個人的には予想してます。三回宙返り一回ひねりとか笑
    2018年01月05日 19:58
  • alchemist

    あけましておめでとうございます。白井選手の床運動の演技構成の変遷、大変興味深く拝読させていただきました。ありがとうございます。
    白井選手の口から床の”16点台”という言葉が時折出ていたことにも注目しています。どうしたら16点台がコンスタントに出せて、この種目で他を今以上に圧倒できるか模索しているのではないかと思っています。
    私は、今のDスコア―をキープしつつ、ひねり系の技の実施時の足交差の修正やシライ2の余裕ある着地を実現して、Eスコアーをコンスタントに9点台にのせてもらいたいです。個人的には、また、リジョンソンの抱え込みをもっと抱え込んで着地前に体を大きく開いて着地をするような表現を見てみたいです。
    2018年01月06日 22:29
  • Ka.Ki.

    >kouさん
    いつもご覧いただきありがとうございます。

    新月面ひねり~前方2回のF+Dですか。すごい連続ですね。新技もどうしても期待してしまいますね。
    2018年01月06日 23:36
  • Ka.Ki.

    >こっこさん
    今年もどうぞよろしくお願いいたします。

    後方7/2~前方2回は2013-2016年ルールの時はずっと入れていて安定していましたから、今のところは最も可能性が高い気もしますね。演技後半ではきつそうな連続なので、構成の組み立てが悩ましいところです。
    2018年01月06日 23:50
  • Ka.Ki.

    >tokubayさん
    いつもご覧いただきありがとうございます。

    シライ3とリ・ジョンソンの2本を入れるだけでも驚異的なことですからね。3回宙返りはちょっと想像できないですが、それでもやはり白井の進化には期待せずにはいられないですね。
    2018年01月06日 23:54
  • Ka.Ki.

    >alchemistさん
    そうですね、たびたび16点台に言及していますよね。頼もしい限りです。

    より正確で雄大な表現への期待、興味深く読ませていただきました。ご指摘のとおり、実施のさらなる向上は課題ですね。2017年も何度か14点台を出してしまっていますし、ロシア勢のDスコアは7点台に迫ってきていますし。
    2018年01月06日 23:58