2017 Worlds AA : Uchimura vs Verniaiev
2017年世界選手権・モントリオール大会がいよいよ来週に近づいてきました。最大の注目はやはり個人総合、昨年のリオデジャネイロオリンピックでわずか0.099差だった内村航平とオレグ・ベルニャイエフ(ウクライナ)の再戦でしょう。
そこで今回は内村とベルニャイエフの今年の成績、特に演技構成やDスコアの観点から、個人総合の戦いを占ってみたいと思います。
まず先にベルニャイエフの今年の主な成績を見てみましょう。ベルニャイエフは2017年もシーズン早々から個人総合の大会を連戦、そのほとんどで優勝しています。当初は大きなミスも出ていましたが、徐々に構成を固め、安定感を高めてきました。
合計Dスコアはユニバーシアードの予選が最高の36.5ですが、これでも平行棒でマクーツ(E)を失敗しており、予定は36.7だったはずです。あん馬やつり輪も種目別では難度を上げた構成を見せており、個人総合に投入してきた場合は37点を超えてくるかもしれません。
VERNIAIEV Oleg (UKR)
FX | PH | SR | VT | PB | HB | T | Rank | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2/4 | レイキャヴィーク Reykjavik Int'l Games | 個人総合 AA | 11.600 5.9 | 15.550 6.5 | 15.550 6.1 | 15.050 5.6 | 15.600 6.4 | 11.650 5.8 | 85.000 36.3 | 1 |
3/4 | アメリカンカップ American Cup | 個人総合 AA | 13.300 5.8 | 14.700 6.5 | 14.633 6.1 | 14.433 5.6 | 15.033 6.7 | 13.600 5.4 | 85.699 36.1 | 2 |
3/19 | W杯・シュトゥットガルト World Cup Stuttgart | 個人総合 AA | 13.533 6.3 | 14.200 6.1 | 14.400 6.1 | 14.700 5.6 | 15.600 6.7 | 12.466 5.5 | 84.899 36.3 | 1 |
4/8 | W杯・ロンドン World Cup London | 個人総合 AA | 13.966 5.6 | 12.900 5.3 | 14.300 6.1 | 14.766 5.6 | 14.866 6.2 | 13.066 5.5 | 83.864 34.3 | 1 |
4/19 | ヨーロッパ選手権 Europeans | 予選 QF | 14.400 6.2 | 14.433 6.1 | 13.900 6.0 | 14.600 5.6 | 14.900 6.3 | 13.733 5.7 | 85.966 35.9 | 1 |
4/21 | ヨーロッパ選手権 Europeans | 個人総合 AA | 13.466 6.1 | 14.500 6.2 | 14.700 6.0 | 14.700 5.6 | 14.500 6.5 | 14.000 5.7 | 85.866 36.1 | 1 |
8/20 | ユニバーシアード Universiades | 予選 QF | 14.900 6.2 | 15.100 6.5 | 15.100 6.0 | 14.750 5.6 | 13.750 6.5 | 13.550 5.7 | 87.150 36.5 | 1 |
8/22 | ユニバーシアード Universiades | 個人総合 AA | 14.350 5.9 | 14.800 6.5 | 15.000 6.0 | 14.650 5.6 | 15.450 6.5 | 14.050 5.7 | 88.300 36.2 | 1 |
さて、我らが内村航平です。内村は5月のNHK杯以降個人総合の試合がありませんが、9月2日に行われた試技会の成績が報道によりDスコアも含めて判っており、このスコアが重要な手がかりになってきます。
全日本、NHK杯では抑え気味の構成だった内村ですが、試技会では6種目の合計で1.0近くDスコアを上げてきました。跳馬はリ・シャオペンでしたが、あん馬の6.0やつり輪の5.9は何を入れて上げてきたのかはっきりしていません。鉄棒はコールマン(E)で落下したとのことで、成功させていればいつもの6.3の構成だったと思われ、予定の合計Dスコアは36.1だったということになります。
しかし、この試技会ではかなりのミスが出たようで合計スコアは83.100と非常に低調でした。本番での内村を心配する必要はまったくないと思いますが、構成は再調整してくる可能性が高いでしょう。合計Dスコアは36.1以上になることはないように思われます。
内村がEスコアで逆転するためには、ベルニャイエフとの合計Dスコアの差は多くても1点程度にはしておきたいところです。リオでは0.7差でした。跳馬は試技会では着地で手を突いてしまったそうですが、リ・シャオペンとシューフェルトでは0.6もDスコアが違ってくるので、ここは何としても跳びたいところです。あん馬やつり輪はいつもの5.7に戻してくるかもしれませんし、平行棒はリオと同等の構成にすれば6.3になります。6種目を戦うための戦術も超一流の内村ですから、きっと最適な構成で試合に臨み、最高の演技を見せてくれることでしょう。
内村航平 UCHIMURA Kohei (JPN)
FX | PH | SR | VT | PB | HB | T | Rank | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4/7 | 全日本 Nationals | 予選 QF | 14.650 5.9 | 14.550 5.7 | 13.800 5.7 | 14.450 5.2 | 13.050 5.9 | 14.850 6.3 | 85.350 34.7 | 4T |
4/9 | 全日本 Nationals | 個人総合 AA | 14.900 6.0 | 14.050 5.7 | 14.000 5.7 | 14.500 5.2 | 14.450 5.8 | 14.450 6.3 | 86.350 34.7 | 1 |
5/21 | NHK杯 NHK Trophy | 個人総合 AA | 14.600 6.0 | 14.400 5.7 | 14.000 5.7 | 14.450 5.2 | 14.300 5.7 | 14.800 6.3 | 86.550 34.6 | 1 |
9/2 | 試技会 Tests | 14.450 6.2 | 14.350 6.0 | 13.250 5.9 | 13.900 5.8 | 13.900 5.9 | 13.250 5.9 | 83.100 35.7 |
今回はベルニャイエフとの戦いに注目しましたが、ライバルは1人ではありません。アメリカンカップでベルニャイエフに勝利したユル・モルダウアー(アメリカ)はDスコアは高くありませんが、Eスコアで勝負するタイプの選手。アメリカンカップではベルニャイエフとの3点以上のDスコアの差をひっくり返しました。
中国勢やロシア勢も強力です。林超攀や肖若騰は国内大会で86点以上を連発、アジア選手権ではともに87点台を出しています。ニキータ・ナゴルニーとダヴィド・ベルヤフスキーもロシアカップで88点台を出しました。2015年世界選手権2位のマンリケ・ラルドゥエ(キューバ)もいます。
そしてもちろん、もう一人の個人総合代表である白井健三にも注目。きっとまた世界を驚かしてくれるでしょう。モントリオールでの最高のメンバーによる最高の戦いに期待が高まります。
この記事へのコメント
S&G
世界選手権への内村選手の記事を、ずっとお待ちしていました。
「我らが内村航平」・・まさに!なんていい響きなんでしょう!
昨晩の報ステで取り上げられていた吊り輪の部分は、どのように思われますか。
いろいろお聞きしたいことばかりなんですが・・・
いつものように淡々と、けれど内に秘めた熱き思いが聞けると、
いよいよだなと胸が高鳴ります。
Ka.Ki.
つり輪は振り上がり中水平のところであれば今年に入ってすでに成果が見られていた部分ではあると思いますが、こういった不断の努力は本当に素晴らしいと思いますし、これこそが内村選手の強さではないかと感じます。
太一
正直、春先の国内の試合を観た時は内村選手の世界7連覇は難しいと思いました。
実際にベルニャイエフ、リンチャオパン、シャオルオテンなどが内村選手の総合得点を上回っていたので。
リオ五輪後ケガの治療期間が必要だったことから仕方がないのですが、やはりDスコアをあれだけ落としては勝負の展開に持っていくイメージが浮かばなかったんですよね。
しかし試技会ではDスコアをそこまで上げていたことに驚きました。おっしゃる通り
鉄棒が予定通りなら36.1を狙っていたんですね。
さすがに本番でそこまで上げるのは難しいようですが、現地に入ってからの本人のコメントでDスコアを「リオの時に戻した」とあったので、どうやら戦える水準まで上げられたと感じています。
7連覇が実現すれば素晴らしいことですが、本人が言うように連覇への感心よりも、これぞキングという完璧な演技がまた観られることを何より心待ちにしています。
Alchem
過去、内村選手が予選1位通過で進んだ試合では、平行棒で疲労が出ているように見受けられました。
もし、リオの時のように、予選2位通過であれば、跳馬と平行棒の間により長い時間がとれて、
鉄棒では予選1位通過の選手にプレッシャーをかけることもできますよね。その意味で、
どのような展開になるのか、予選から目が離せないところです。
Ka.Ki.
いよいよですね。ポディウムトレーニングの映像を見る限り、ゆかは6.0、あん馬も6.0のようです。他の種目をリオの時に戻したとなると合計Dスコアはやはり36.1かもしれませんね。
そうですね。何より本人が目指す完璧な演技ができるよう応援しましょう。
Ka.Ki.
ローテーションが決まるので予選は非常に重要ですよね。リオはまさにその展開でした。第1組がどんなメンバーになるのかもとても気になります。楽しみですね。
初心者
そしてやはりラルドゥエト強い。中国の肖も強そうです。
Ka.Ki.
ラルドゥエ選手は来ましたね。中国勢もさすがですし、ベルヤフスキー選手も安定しています。ここに白井選手がどこまで食い込めるかですが、鉄棒で落下しても1.002点差の4位ですから、かなり期待できるのではないかと思います。内村選手がいないのは残念ですが、面白い決勝になってくれそうです。
初心者
予選見て、普段通りの調子なら勝てそうだとは思いましたが…結果は出てしまったので仕方ないですね。。。