Eスコアの算出方法

Calculation of E-Score


Dスコアに続いて、演技実施の完成度を表すEスコアについても簡単に算出方法をまとめておきたいと思います。基本的なルールは変わっていないので旧サイトの記事とほとんど同じではあるのですが…。



Dスコアが難度を積み上げていくことにより算出されるのとは対照的に、Eスコアは10点満点から減点していくことによって算出されます。減点される要素には実施欠点技術欠点があり、減点の点数は程度により以下の4種類があります。

小欠点中欠点大欠点落 下
0.10.30.51.0

基本的には、これらの減点は技術的に完璧な実施な実施からの
・小欠点 小さな、またはわずかな逸脱
・中欠点 明らかな、または大きな逸脱
・大欠点 より大きな、または極端な逸脱
であり、落下は着地での転倒を含みます。

減点項目はここで全てを網羅することはできませんが、実施欠点には
・あいまいな姿勢(小欠点または中欠点または大欠点)
・手や握り手の位置を修正する(小欠点)
・倒立で歩く、またはとぶ(小欠点)
・ゆか、マット、または器械に接触(触れる:小欠点、ぶつかる:大欠点)
・腕、脚を曲げる、脚を開く(小欠点または中欠点または大欠点)
・着地で脚を開く(肩幅以下:小欠点、肩幅を超える:中欠点)
・着地でぐらつく、小さく足をずらす、手を回す(小欠点)
・不安定な着地(1歩動く:小欠点、大きく1歩:中欠点)
・無価値な開脚(中欠点)
などがあります。

また、技術欠点には
・倒立などでの角度の逸脱(15°~30°:小欠点、31°~45°:中欠点、45°超:大欠点+D審判によって難度不認定)
・正しい静止姿勢からの角度の逸脱(15°まで:小欠点、16°~30°:中欠点、31°~45°:大欠点、45°超はD審判によって難度不認定)
・ひねり不足(30°まで:小欠点、31°~60°:中欠点、61°~90°:大欠点、90°超はD審判によって難度不認定)
・宙返りや手放し技で高さや大きさ不足(小欠点または中欠点)
・力技を振動で、振動技で力を使う(小欠点または中欠点または大欠点)
・静止時間不足(2秒未満:中欠点、静止しない場合は大欠点+D審判によって難度不認定)
・上昇運動が途切れる(小欠点または中欠点または大欠点)
・倒立への技で、脚が下がる(15°まで:小欠点、16°~30°:中欠点、31°~45°:大欠点、45°超はD審判によって難度不認定)
・中間振動(半中間振動または無価値な振り下ろし:中欠点、中間振動:大欠点)
・体を伸ばす準備のない着地(小欠点または中欠点)
などがあります。

種目に特有の減点項目もあり、例えば、ゆかでは「コーナーへの単純なステップや移動」が減点となりますし、つり輪では「過度のケーブルの揺れ」が減点となります。



採点競技なので、姿勢や角度などは審判によってどの程度の減点になるのか判断が分かれる場合があります。このためEスコアは複数の審判によって採点されその平均を取ることで算出されます。

2009年まで、FIG公式の競技会のうちオリンピックや世界選手権においては、E審判は6人制で最も高い得点と最も低い得点を除外し、4人の得点の平均点をEスコアとしてきました。

2009年までの例
E1E2E3E4E5E6Eスコア
9.59.49.59.39.49.69.450

審判の6人制は1993年から長らく続いてきた制度でしたが、2010年からFIGは新たにRJ(Reference Judge)制を導入しました。これはE審判5人、R審判2人によって採点されるものです。これまでどおりE審判の最高点と最低点を除外し3人の得点の平均点(EJスコア)が算出されますが、このスコアと2人のR審判の平均点(REスコア)との差(デルタ)が一定の値以上になったときは、EJスコアとREスコアをさらに平均して最終的なEスコアを算出します。

例1
E1E2E3E4E5EJスコアR1R2REスコアデルタ
8.99.09.08.99.28.9669.19.09.0500.084
デルタが小さいのでEスコア = EJスコア = 8.966

例2
E1E2E3E4E5EJスコアR1R2REスコアデルタ
8.99.09.08.99.28.9669.19.29.1500.184
デルタが大きいのでEスコア = ( EJスコア + REスコア ) / 2 = 9.058

デルタの値は、REスコアによって以下の値が基準となります。

REスコアデルタ
9.600 - 10.0000.05
9.400 - <9.6000.10
9.000 - <9.4000.15
8.500 - <9.0000.20
8.000 - <8.5000.30
7.500 - <8.0000.40
0.000 - <7.5000.50

ただし、2人のR審判の得点に一定以上の差があったときはREスコアは無効となり、EJスコアがそのままEスコアになります。

例3
E1E2E3E4E5EJスコアR1R2REスコアデルタ
8.99.09.08.99.28.9668.99.49.1500.184
デルタは大きいが、R1とR2に差があるためEスコア = EJスコア = 8.966

R1とR2の差は、EJスコアによって以下の値が基準となります。

EJスコアR1とR2の差
9.600 - 10.0000.0
9.400 - <9.6000.1
9.000 - <9.4000.2
8.500 - <9.0000.3
8.000 - <8.5000.4
7.500 - <8.0000.5
0.000 - <7.5000.6

この制度により、2009年までは例えば9.275のような0.005刻みのEスコアしかありえませんでしたが、2010年からは9.133(小数第4位切捨)のような割り切れないEスコアが見られるようになっています。これにより端数処理の問題が起こりうることは旧サイトでも記事にしました。

さらにR審判の得点が適用されると8.758などという中途半端なEスコアになることもあり、近年の大会のリザルトではその旨まで明記されているものもありますが、通常はそこまで突き詰めて見ることもないと思われます(笑)。

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なお、FIG公式の競技会でもオリンピックや世界選手権以外の国際大会ではR審判が設置されずE審判のみの4人制や6人制で採点されています。

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