ピアッティいろいろ

Piatti on HB


鉄棒のピアッティは、シュタルダーなどのバーに近い技から直接トカチェフを行う手放し技。これまではただのトカチェフを行うのと同じ難度設定だったためほとんど使う選手がいませんでしたが、2017年のルール改訂において一律に格上げとなり、今後はピアッティ系の技を使う選手も増えてくると思われます。

最近の記事でそのピアッティを取り入れた演技をいくつか紹介していますが、ここで難度表にあるピアッティ系の技にはどんなものがあるのが一気に見ていくことにしましょう。



まずは基本となるピアッティです。2016年まではトカチェフと同じC難度でしたが、2017年からD難度に格上げされました。採点規則での表記は「(ほん転or足裏支持回転orシュタルダー)から開脚トカチェフ」となっていますので、それぞれの形態を見てみましょう。

ピアッティ(シュタルダーから) Piatti from Stalder


一番ポピュラーなのはもちろん開脚のシュタルダーから。1992年バルセロナオリンピックでの畠田好章の雄大な実施です。


ピアッティ(閉脚シュタルダーから) Piatthi from Stalder Pk


閉脚のシュタルダーからは、クリスチャン・イワノフ(ブルガリア)の実施です。閉脚シュタルダー自体が2006年のルール改訂で開脚と同一枠同難度になりほぼ見られなくなりました。当然、今後も閉脚シュタルダーからピアッティをやる選手はまず現れないと思われます。


ピアッティ(足裏支持回転から) Piatthi from Foot


足裏支持回転からのピアッティは2017年のヨーロッパ選手権でマキシム・ジェンジェス(ベルギー)が実施した演技を紹介しました。上の動画はビル・ロス(アメリカ)の演技。


ピアッティ(ほん転から) Piatti from Free Hip


ほん転(後方浮支持回転)からが、おそらく最もレアな形態でしょう。カーティス・ヒバート(カナダ)の実施です。


4種類のピアッティを見てきましたが、採点規則の表記どおりこれらは全て同一枠の扱いになります。また、足裏支持回転は、採点規則に「難度表に記載のない足裏支持の技は認められない(ピアッティ系を除く)」と明記されており、今日の鉄棒においてはピアッティでしか見ることのできない動きになっています。



続いて、難度表にあるその他のピアッティ系の技を見ていきましょう。

屈身ピアッティ Piatti Pk


イワノフが再び登場。屈身のピアッティです。トカチェフは開脚と屈身が同一枠ですが、ピアッティでは別枠の技になっています。つまり開脚と屈身、両方を演技に入れることができD難度を2つ取ることができるということになります。


伸身ピアッティ Piatti Lay


伸身のピアッティはE難度になりました。イ・ジュヒョン(韓国)の実施。


ピアッティひねり Piatti 1/2


シュタルダーからのリンチとも言えるでしょう。E難度。採点規則での正式な表記は「ピアッティひねり片大逆手後ろ振り上がり倒立」であり、リンチと同様に倒立まで振り上がることが要件です。先日の記事で紹介したベチェルニェス・ダビド(ハンガリー)の別大会での実施。


伸身ピアッティひねり(キエジュコヴスキ) Piatti Lay 1/2 (Kierzkowski)


こちらはシュタルダーからのモズニクにあたる技。F難度。アダム・キエジュコヴスキ(ポーランド)が2009年に発表、2015年の通達で名前が付きました。本家以外の実施例は今のところないと思います。


伸身ピアッティ1回ひねり(スアレス) Piatti Lay 1/1 (Suarez)


ピアッティ系で最高峰のG難度となるのがスアレス。シュタルダーからの伸身トカチェフで1回ひねります。発表者はカシミロ・スアレス(キューバ)。動画はピアッティ系が得意だった森赳人の実施。かつて加点が付いたアドラーひねりからの連続で行っています。



いろいろなピアッティを見てきましたが、個人的にはやはり開脚と屈身が別枠なのが気になるところではあります。トカチェフもかつては別枠だった時代があり、使い手のいなかったピアッティがそのままになっているだけだと思われ、トカチェフと統一の扱いにした方がいいように思います。

トカチェフ系の技へを中心に連続技もどんどん出てくるでしょう。下の練習動画のようなピアッティ~リンチであればD+Dで0.2の加点が得られます。現在の鉄棒のルールでは5つ入れられる手放し技とその組合せでどれだけDスコアを高められるかが勝負のカギになっており、ピアッティ系の技はこれまでとは一転して重要な技群の一つになったと言えるでしょう。

この記事へのコメント

  • おんちっち

    こんにちは。

    畠田さんのピアッティー、久しぶりに見ました!
    検索しても中々出てこなかったので(苦笑)

    ピアッティは勢いを感じる魅力的な技ですね。
    キエジュコヴスキという技の名前も初めて知りました(^^;)
    2017年06月02日 07:33
  • Ka.Ki.

    おんちっちさん、いつもありがとうございます。

    畠田選手がピアッティを使っていたのはこの頃だけですかね。1993-1996年ルールの頃はコバチが話題でしたし。

    伸身ピアッティひねりは当サイトではキエジュコヴスキとしましたが、3月に出た日本語版採点規則ではキエルコフスキーと表記されています。
    2017年06月02日 21:05
  • ユーマォ

    個人的な感想ですが、スアレスは凄い複雑な技だと思います。
    いわば、シュタルダーリューキンですよね。
    もっと言えば、シュタルダー(等)からの伸身トカチェフ一回捻り。
    これが伸身コバチ一回捻り(カッシーナ)と同格の難度であることに、ちょっとだけクビを捻ってしまうのですが、
    2017年06月02日 21:39
  • ユーマォ

    あ、でも同じ「伸身じゃない捻らない」ピアッティとコバチもD難度で同じなんですよね。
    そう考えれば、合理性はありますね。
    2017年06月02日 21:42
  • Ka.Ki.

    体操競技では数多ある技をI難度まで含めても9段階、実質的にはG難度までのわずか7段階程度に分類してしまうわけですから、不都合が生じないわけがありません。トカチェフ系とコバチ系については選手によって得手不得手というものが当然あるでしょうし、使い手の多寡によっては今回のピアッティ系のような難度の調整もあるでしょう。個人的にはそういった折り合いを理解しつつ見ていくしかないのかなと思っています。
    2017年06月02日 22:40
  • KB

    2000年頃に順天堂の選手が閉脚シュタルダーからのリューキンをやっていましたよ。
    記事にある森選手はその頃清風高校でしたが当時から伸身スアレスを高い完成度でやっていました。
    2017年06月03日 17:17
  • ナダル

    2000年以前も現在と同様に難度は格上げされてましたが、
    実施する選手の少ないレア技でしたね。
    当時から詰まるような実施が多かった印象ですが、
    普通のに比べて推進力が出ないんでしょうかね?
    このあたりも難度格上げになった要因だと思いますが…
    2017年06月03日 17:48
  • Ka.Ki.

    >KBさん
    森選手はそんな頃からスアレスを得意としていたのですね。
    2017年06月03日 21:36
  • Ka.Ki.

    >ナダルさん
    やはり車輪の抜きやあふりといったものが使えないでしょうから簡単ではないのでしょう。そういった中で雄大な空中局面を表現できるととても光ると思うので、そんな実施がたくさん出てほしいと思います。
    2017年06月03日 21:40