Value of Double Back and Arabian Double on FX
2017年のルール改訂で、ゆかの後ろとびひねり系の宙返りは、後方宙返りと同系の技として扱われることになりました。さらに後方2回宙返り技については、かかえ込みと屈身が同一枠になったり、ひねり数によって格上げになる技があったりといった変更も盛り込まれており、その内容は非常に複雑なものになっています。

難度表の変更箇所については、旧サイトの2017年版採点規則における主な変更点(ゆか)の記事でも列挙していますが、これではあまりにも分かりにくいので、後方2回宙返りと後ろとびひねり前方2回宙返り(アラビアンダブル)について、どのように変更されているのかを表にまとめてみたいと思います。
まずは2013年版採点規則における難度です。表中、文字数の関係で「かかえ込み」は「抱込」としています。
・後方2回宙返り系は、1回ひねりと3/2ひねり、2回ひねりと5/2ひねりが同一枠
・後方2回宙返り系は、かかえ込みと屈身が同難度
・アラビアンダブル系は、かかえ込みより屈身の難度が1段階高い
・アラビアンダブル系は、1回ひねり(イポリト)になると後方2回宙返り系として扱われる
といった難度設定になっていることが分かります。
後方2回宙返り系 | 難度 | 難度 | アラビアンダブル系 |
---|---|---|---|
抱込 | C | ||
D | 抱込 | ||
抱込 1回ひねり(ツカハラ) | D | D | 抱込 1/2ひねり |
抱込 3/2ひねり | ← | 抱込 1回ひねり(抱込イポリト) | |
抱込 2回ひねり | E | ||
抱込 5/2ひねり | |||
抱込 3回ひねり(リ・ジョンソン) | G | ||
屈身 | C | ||
E | 屈身 | ||
屈身 1回ひねり | D | E | 屈身 1/2ひねり |
屈身 3/2ひねり | ← | 屈身 1回ひねり(イポリト) | |
伸身 | D | ||
伸身 ひねり | F | 伸身(タマヨ) | |
伸身 1回ひねり | E | F | 伸身 1/2ひねり(ペネフ) |
伸身 3/2ひねり | ← | 伸身 1回ひねり(伸身イポリト) | |
伸身 2回ひねり | F | ||
伸身 5/2ひねり | |||
伸身 3回ひねり(シライ3) | H |
2017年版採点規則では以下のようになります。表中の斜め矢印は難度の格上げ、格下げを表します。
・姿勢とひねり数が同じ後方2回宙返りとアラビアンダブルは同一枠
・1/2ひねりと1回ひねりは、かかえ込みと屈身が同一枠
・3/2ひねりや5/2ひねりは、1段階格上げ
といった変更が行われていることが分かります。
後方2回宙返り系 | 難度 | アラビアンダブル系 |
---|---|---|
抱込 | C | |
屈身 | C | |
抱込 1/2ひねり New | D | 抱込 |
屈身 1/2ひねり New | 屈身 ↘ | |
抱込 1回ひねり(ツカハラ) | D | 抱込 1/2ひねり |
屈身 1回ひねり | 屈身 1/2ひねり ↘ | |
抱込 3/2ひねり ↗ | E | 抱込 1回ひねり(抱込イポリト) ↗ |
抱込 2回ひねり | E | |
抱込 5/2ひねり ↗ | F | |
抱込 3回ひねり(リ・ジョンソン) | G | |
伸身 | D | |
伸身 1/2ひねり ↗ | E | 伸身(タマヨ) ↘ |
伸身 1回ひねり | E | 伸身 1/2ひねり(ペネフ) ↘ |
伸身 3/2ひねり ↗ | F | 伸身 1回ひねり(伸身イポリト) ↗ |
伸身 2回ひねり | F | |
伸身 5/2ひねり ↗ | G | |
伸身 3回ひねり(シライ3) | H |
個々の技を見ていくと、屈身アラビアンダブルはかかえ込みと同一枠となったことで実質的に消滅してしまうものと思われます。かかえ込みについては引き続き実施が見られるでしょう。タマヨやペネフは正確に実施されれば前方伸身2回宙返りの局面を持つ大技ですが、格下げという扱いになってしまいました。
新ルールでは格上げになった2回宙返り3/2ひねりや5/2ひねりの出現数が増えるかもしれません。前方着地ということもあり格上げになったものと思われますが、さらに前方系の宙返りに連続して組合せ加点を狙うこともできるため、大きな武器になる可能性があります。女子ではシモーネ・バイルズ(アメリカ)の名が付く伸身ダブルの1/2ひねりが男子でも見られるようになるかもしれません。
ちょっと目を引くのはアラビアンダブルの1回ひねりであるイポリト系でしょうか。2013-2016年ルールでは後方2回宙返り3/2ひねりとして扱われ、実質的に大きく格下げになりましたが、再び難度が上がることになりました。この技の数奇な運命については次回ちょっと詳しく記事にしたいと思います。
この記事へのコメント
伸身ローチェ
でも選手の方のイポリトはどうなんでしょうね…アラビアンが得点源でしたから…
あと5/2ひねりの優遇は結構好みです。リジョンソンがG難度でそれから半ひねり減っただけの伸身の5/2ひねりがFはバランスが悪いと思っていました。
どちらのルールの考えがあってのこととは思っているのですが、時々FIGの考えがわからないことがあったりもして、でも今回のルールは少なくともわかりやすくはある気がします。
えせアラブ人
屈身アラビアンダブルが好きなんですけど、消滅危機ですか~(泣)
今後はタマヨの普及に期待!と思ったら格下げ・・・。
床は沢山捻る事が重要みたいですね。
体操技
いつも楽しく読ませていただいてます!
今回のダイビング屈身ダブルの格下げは悲しいばかりです。泣
身体がキレイに2つにたたまれた屈身姿勢大好物なんですけど、また1つ見れなくなっていくんでしょうか、、、
谷川航選手の「ダイビング屈身ダブル〜前方抱え込み宙返りひねり」好きだったんですけど見れなくなると思うとさみしいです…
ただ、後方抱え込み2回宙返り5/2ひねりが格上げになったのはなんとなく嬉しいです。
この技といえばアメリカのレジェンドレ選手ですよねー。笑
なんでレジェンドレ選手は難度が高いわけでもなかったこの技を使い続けたのか少し疑問です。笑
やっぱり個人的な「こだわり」でしょうか?笑
何はともあれ、ダイビング屈身ダブルが見れなくなるのはさみしいですけど、また今までなかなか目にすることが出来なかった技を見れるのがすこし楽しみです!
Ka.Ki.
イポリト選手は度重なるルール改訂に対応し続けてきたベテランですから、これくらいものともしないのではと思いますが、欧米を中心にアラビアンを得点源にしていた選手は多いので、影響は大きいですね。
Ka.Ki.
屈身アラビアンダブルはお好きな方多いですね(笑)。
今回の改訂ではダブルが必須になりましたし、バランスの取れた構成が望まれているとは思うんですけどね。
Ka.Ki.
Twitterの体操技さんでしょうか。こちらこそいつも楽しませていただいてます。
谷川航選手のあの日本人らしからぬ連続は見事ですね。前方ダブルの方は屈身もまだありますし、ひねりは格上げにもなるので、また新しい連続や技を見せてくれるのではないかと期待しています。
レジェンドレ選手は前方着地の方が得意なんでしょうね。やっている宙返りのほぼ全てがそうなので。