内村航平のDスコア7.2の鉄棒

Uchimura's HB D:7.2


2017年に入り新ルールの適用がいよいよ始まりますが、これまでも新年最初の記事は日本の選手の演技や技を取り上げていましたので、今回は2013-2016年ルールにおける内村航平の鉄棒について書いてみようと思います。

旧サイトでの最後の記事、エクササイズ・オブ・ザ・イヤー2016でも少し触れたとおり、前サイクルにおける内村の鉄棒のDスコアは2014年までは6.9、2015年からは7.1が通常でしたが、7.2となる演技をこの4年の間に3回行っています。全て構成の異なる3とおりの演技を見てみましょう。ここから新ルールにおける内村の鉄棒の展望が見えてくるかもしれません。


2014年世界選手権・南寧大会:種目別決勝 2014 Worlds Nanning (CHN) EF


1.アドラーひねりJam 1/2DIV
2.~伸身トカチェフ+ Tkatchev LayDII(CV:0.1)
3.カッシーナCassinaGII
4.~コールマン+ KolmanFII(CV:0.2)
5.シュタルダーとび3/2ひねり片大逆手Stalder Hop 3/2 to MGDIII
6.アドラー1回ひねり片逆手Jam 1/1 to MGDIV
7.~ヤマワキ+ YamawakiDII(CV:0.1)
8.エンドーEndoBIII
9.後方とび車輪1回ひねりHop 1/1CI
10.後方伸身2回宙返り2回ひねり下りDouble Back Lay 2/1EV

D:7.2
E:8.525
Score:15.725

2014年はDスコア6.9を使っていた内村が世界選手権の種目別決勝で突如見せた構成。通しでは一度も試したことがなかったという、まさにぶっつけ本番の演技だった。リューキン(F)を入れるなどしてDスコア7.5まで狙っていたとも。結果はDスコア7.7のユプケ・ゾンダーランド(オランダ)に及ばず2位だったが、カッシーナ~コールマンはそのゾンダーランドも見せたことない連続であった。


2014年豊田国際 2014 Toyota International (JPN)


1.屈身コバチKovacs PkEII
2.カッシーナCassinaGII
3.シュタルダーとび3/2ひねり片大逆手Stalder Hop 3/2 to MGDIII
4.アドラーひねりJam 1/2DIV
5.~コールマン+ KolmanFII(CV:0.1)
6.後方とび車輪3/2ひねりHop 3/2 to MGCI
7.アドラー1回ひねり片逆手Jam 1/1 to MGDIV
8.~ヤマワキ+ YamawakiDII(CV:0.1)
9.後方とび車輪1回ひねりHop 1/1CI
10.後方伸身2回宙返り2回ひねり下りDouble Back Lay 2/1EV

D:7.2
E:8.725
Score:15.925

上述の記事にも書いたように2014年の年末に試したこの演技構成が、翌年からオリンピックにかけて使われたDスコア7.1のベースとなった。ヤマワキの後のエンドー(B)はこの構成ではトップ10技から外れる。15.825を出していた田中佑典を0.1上回る高得点で優勝を飾っている。


2016年全日本種目別 2016 JPN Apparatus Nationals


1.カッシーナCassinaGII
2.~コールマン+ KolmanFII(CV:0.2)
3.シュタルダーとび3/2ひねり片大逆手Stalder Hop 3/2 to MGDIII
4.アドラーひねりJam 1/2DIV
5.~ゲイロード2+ Gaylord2EII(CV:0.1)
6.アドラー1回ひねり片逆手Jam 1/1 to MGDIV
7.ヤマワキYamawakiDII
8.エンドーEndoBIII
9.後方とび車輪1回ひねりHop 1/1CI
10.後方伸身2回宙返り2回ひねり下りDouble Back Lay 2/1EV

D:7.2
E:8.500
Score:15.700

5種目で権利があった2016年の全日本種目別だったが、出場はこの鉄棒のみに絞っておりオリンピックの種目別を見据えた構成だったと言える。再びカッシーナ~コールマンを実施した上、アドラーひねり~ゲイロード2という連続まで見せる。アドラー1回ひねりで振り戻ってしまい、本来であれば少なくともDスコア7.3以上を狙った構成であった。



内村の演技は普段と違う構成、普段入れていない技でも本当にきれいです。オリンピックの種目別決勝でこの鉄棒が見られなかったのは本当に残念でしたが、今年もまた素晴らしい演技を見せてくれることでしょう。大いに期待したいと思います。

2017年からはバー上の技と手放し技の組合せ加点がなくなります。アドラーひねりや1回ひねりからの連続は昨年までは大きな武器となりましたが、今後は手放し技同士の組合せで加点を得ていくことが勝利の条件となってくるでしょう。内村であればすでに見せているカッシーナ~コールマンのようなコバチ系の連続が考えられますが、あっと驚くような技を見せてくれるかもしれません。本当に楽しみです。

この記事へのコメント

  • おんちっち

    初めまして。
    体操はド素人ですが、以前からブログの方は拝見させて頂いております。

    内村選手の鉄棒ですが、カッシーナからコールマンの連続技、
    2014年限定の技ではなく、昨年も披露していたのですね!
    ゲイロード2まで実施していたとは知りませんでした。

    内村選手の大技は、足先まで綺麗な姿勢なのが凄いですね~。
    アドラー1回ひねりだけは辛そうですけど(苦笑)

    ルールの改正で各選手の演技内容が変わってくると思うのですが、
    やはりコバチ系やトカチェフ系の連続技が増えそうでしょうか?
    個人的には単独技で構わないので、色々な種類の技が見たいですね。
    2017年01月06日 08:04
  • Ka.Ki.

    おんちっちさん、はじめまして。いつもご覧いただきありがとうございます。

    カッシーナ~コールマンの連続すごいですよね。ゲイロード2もきれいで昨年のこの演技は本当に驚きました。しかし、さすがの内村も毎回このような演技は辛いと思うので、普段使いの構成はどのようなものになるのか、そして種目別のようなここ一番の場面ではどんな演技を見せてくれるのか、本当に楽しみなんですよね。

    ルール改訂の影響ですが、手放し技の連続はやはりトカチェフ系が多くなる気がします。また同系への連続のほか、ギンガー系につなげる実施も増えるのではと思っています。あとは格上げされたピアッティ、デフ、ヴィンクラー、ペガンといった技も増えてくるものと予想しています。
    2017年01月06日 21:16